モロ・イスラム解放戦線

モロ・イスラム解放戦線（MILF）の歴史と概要

モロ・イスラム解放戦線（MILF、Moro Islamic Liberation Front）は、フィリピン南部ミンダナオ島を中心に活動したイスラム系反政府武装組織です。かつてはアブサヤフとともに、フィリピン政府と激しい武力衝突を繰り返しました。パラワン州、スールー諸島、バシラン州などを主な活動拠点としていました。

MILFの成立と初期の活動

MILFは1977年、既存のイスラム系反政府組織であるモロ民族解放戦線（MNLF）から分派して結成されました。サラマト・ハシムが、ミンダナオ島のマギンダナオ族やマラナオ族などの支援を受け、組織を率いました。MNLFが1976年のトリボリ協定後、内部抗争に陥り分裂したことが、MILF成立の背景にあります。ヌル・ミスアリ議長の穏健路線に反発したサラマト派がMNLFを離脱し、リビアのカダフィ大佐からの支援も得ながら、1981年にMILFを正式に発足させました。

武装闘争と和平交渉

1987年、フィリピン政府はミンダナオ島にイスラム教徒自治地域を設ける提案をしましたが、MILFはこれを拒否し、武装闘争を継続しました。1997年には政府とMILFの間で和平協定が結ばれましたが、2000年にジョセフ・エストラーダ大統領によって破棄され、MILFはジハードを宣言、再び武力衝突へと発展しました。

この頃、MILFの規模は1万5千人以上に膨れ上がり、フィリピン国内最大の反政府武装勢力となりました。フィリピン国軍は各地の軍事拠点を制圧し、MILFの司令部を占拠するなど、組織の弱体化を図りました。しかし、MILFはその後もミンダナオ島南部での遊撃戦や、大都市圏での無差別爆弾テロを繰り返しました。

グロリア・アロヨ政権下では和平交渉が進み、休戦協定が結ばれるものの、2005年にはマギンダナオ州で政府軍への攻撃が発生するなど、完全な和平は実現しませんでした。アブサヤフの崩壊によって、多くの兵士や指導者がMILFに合流したことで、MILFの兵力は再び1万5千人から2万人規模に増加しました。

国際社会との関わりと和平合意

MILFはジェマ・イスラミアやアルカイダとの関係を否定していましたが、軍事訓練や人員提供の関与が指摘されています。2011年には、日本政府の仲介により、アキノ大統領とMILF最高指導者ムラド・エブラヒム議長が極秘会談を行い、和平に向けた動きが加速しました。国際協力機構（JICA）もこの地域の事業に資金提供を行い、日本は和平交渉に大きく貢献しました。

2012年にはフィリピン政府とMILFの間で「枠組み合意」が署名され、2016年に新たなバンサモロ自治政府を創設することで合意しました。しかし、2013年にはモロ民族解放戦線によるサンボアンガ襲撃事件が発生するなど、和平への道は険しいものでした。

2014年3月、ついにフィリピン政府とMILFは包括和平協定に調印。しかし、2015年には大規模な武力衝突が発生するなど、和平合意後も課題は残りました。現在、日本のNGOによる平和教育や治安維持能力向上事業が実施されています。

まとめ

MILFは、長年にわたる武装闘争を経て、最終的には和平合意に至りました。しかし、その過程では多くの犠牲者が出たことは忘れてはなりません。この歴史は、フィリピンにおける宗教対立や民族問題の複雑さを改めて示すものであり、今後の平和構築に向けた努力が継続していく必要があります。

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