モンゴメリー郡 (メリーランド州)

メリーランド州モンゴメリー郡：豊かな自然と高度な都市機能が共存する地域

モンゴメリー郡は、アメリカ合衆国メリーランド州の中央部に位置し、ワシントンD.C.の北西、ボルチモアの南西に位置しています。人口は100万人を超え、メリーランド州内で最も人口が多い郡です。ワシントン・ボルチモア・北バージニア広域都市圏に属し、特に隣接するワシントンD.C.との関係が深く、経済、文化、交通などさまざまな面で結びつきが強い地域です。

郡の概要

郡庁所在地はロックビル市で、郡内最大の都市の一つです。しかし、人口規模ではジャーマンタウンが最大です。モンゴメリー郡は、アメリカ国内でも有数の裕福な郡として知られています。一人当たり所得は州内で上位にランクインし、世帯所得の中央値も非常に高い水準です。また、25歳以上の住民における大学卒業者の割合は国内最高レベルに達しており、教育水準の高さも特徴です。

郡民の多くは、シルバースプリング、ジャーマンタウン、ベセスダといった未編入地域に居住していますが、ロックビルやゲイザースバーグなどの法人化都市にも人口が集中しています。

郡名の由来

モンゴメリー郡の名前は、アメリカ独立戦争で活躍したリチャード・モントゴメリー将軍に由来します。郡の領域は、かつてチャールズ郡、プリンスジョージズ郡、フレデリック郡に属していた地域を統合して形成されました。郡の愛称は「モコ」で、「モンゴメリー」と「カウンティ（郡）」の頭文字を組み合わせたものです。

歴史

モンゴメリー郡の歴史は、先住民であるピスカタウェイ族の存在から始まります。ヨーロッパ人が入植する以前は、豊かな森林地帯にクリークや小川が流れ、ポトマック川やパタクセント川に注いでいました。ピスカタウェイ族は、この地域に小さな集落を形成し、サスケハノック族やセネカ族といった他の部族と狩猟場やインディアン道を共有していました。

17世紀初頭、イングランド人のジョン・スミス船長がポトマック川を探検した際に、この地域を訪れた最初のヨーロッパ人である可能性があります。その後、イングランド王チャールズ1世が初代ボルティモア男爵にメリーランド植民地を払い下げたことで、ヨーロッパ人による所有権主張が始まりました。初期の入植者は土地投機家であり、土地を分割して開拓者に売りさばきました。1715年頃からイギリス人開拓者が農場やプランテーションを建設し始め、タバコなどの農産物を生産しました。

独立戦争前には、イギリス本国からの課税に対する抗議の声が上がり、独立宣言後には、新しい州憲法を起草し、メリーランド州の建設に貢献しました。州議会は、チャールズ郡、プリンスジョージズ郡、フレデリック郡に属していた地域を統合し、モンゴメリー郡を設立しました。独立戦争中には、大陸軍に武器、食料、兵士を提供しました。

19世紀には、農業が郡経済を支え、奴隷制度も存在しました。1850年代には、主要農産物がタバコからトウモロコシに変わりました。奴隷制度廃止運動においては、郡出身の奴隷ジョサイア・ヘンソンの自伝が、ハリエット・ビーチャー・ストウの小説『アンクルトムの小屋』のモデルになったとされています。

1870年代には、ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道が開通し、ワシントンD.C.と接続されました。これにより、タコマパーク、ケンジントン、ガレットパークなどの地域が発展しました。20世紀には、タコマパークの一部がモンゴメリー郡に併合され、郡内では連続狙撃事件も発生しました。郡内には多くのアメリカ合衆国国家歴史登録財が存在します。

経済

モンゴメリー郡は、バイオテクノロジー産業や研究の中心地として発展しており、国内でも有数の集積地となっています。郡内には、ジョンズ・ホプキンス大学のモンゴメリー郡キャンパスやハワード・ヒューズ医療研究所などの研究機関が存在し、アメリカ食品医薬品局、アメリカ国立衛生研究所などの連邦政府機関も立地しています。ディスカバリー・コミュニケーションズ、ロッキード・マーティン、マリオット・インターナショナルなど、多くの大企業が郡内に拠点を置いています。

ベセスダやシルバースプリングの中心街は、郡内最大のビジネス街であり、多くの主要都市と競い合っています。

地理

郡の総面積は約1,313平方キロメートルで、そのほとんどが陸地です。モンゴメリー郡はピードモント台地上に位置し、穏やかな起伏のある地形が特徴です。標高は、ポトマック川沿岸の海面近くから、郡北部の268メートルまで変化します。バレーの底から丘陵部頂上までの高低差は、数百メートルにもなります。

交通

郡内には、州間高速道路270号線が南北に走り、ワシントンD.C.と周辺地域を結んでいます。インターカウンティ・コネクター（メリーランド州道200号線）は、東西を結ぶ有料道路で、州間高速道路370号線や州間高速道路270号線などを接続しています。また、メリーランド州道355号線は、270号線に並行して走り、ロックビル・パイクとしても知られています。

公共交通機関としては、バス路線や鉄道網が整備されています。ワシントン都市圏交通公社のメトロバスや、ライドオンと呼ばれる郡内バスが運行されています。鉄道では、アムトラック、マーク通勤線、ワシントンメトロのレッドラインが利用可能です。また、モンゴメリー郡空港は、ゲイザースバーグにある主要な一般用途空港です。

気候

モンゴメリー郡は、温暖湿潤気候に属し、四季がはっきりしています。夏は暑く湿度が高く、冬は寒くなります。降水量は年間を通して平均的で、夏には雷雨が多く発生します。年間の平均気温は13℃で、最高気温は夏には29℃、冬には7℃程度になります。

人口動態

1970年代以降、郡は中庸価格住宅地帯計画を採用しており、開発業者に対して、手頃な価格の住宅供給を求めています。この計画は、社会経済的に多様な地域を創出することを目的としています。

郡政府

モンゴメリー郡は、郡執行役と郡政委員会による政府形態を採用しています。郡執行役は行政の長であり、郡政委員会は立法を担当します。郡政委員は、区選出と郡全体選出の二つの方法で選ばれます。モンゴメリー郡警察署は、郡全体の警察機能を行っています。郡には、メリーランド首都公園計画員会とワシントン郊外衛生委員会という二つの郡にわたる機関があります。

酒類統制

モンゴメリー郡は、蒸留酒の販売を独占していますが、ビールやワインなどの発酵酒は民間の店舗で販売できます。これは、アルコール飲料統制郡として知られています。

都市と町

モンゴメリー郡には、ゲイザースバーグ、ロックビル、タコマパークなどの市や、バーンズビル、ブルックビル、チェイビィチェイスなどの町、多くの未編入地域が存在します。これらの地域は、それぞれ異なる特徴を持ち、多様な文化を形成しています。

教育

郡内の公立学校は、モンゴメリー郡公共教育学区が管轄しています。モンゴメリー・カレッジは公立のコミュニティカレッジです。また、州立大学システムが、ユニバーシティズ・アット・シャディグローブという施設を運営しています。

文化

モンゴメリー郡の住民は、多様な宗教的背景を持っています。セブンスデー・アドベンチスト教会が郡内に本部を置いています。

スポーツ

ベセスダにあるコングレッショナル・カントリークラブは、世界有数のゴルフコースとして知られており、全米オープンなどの主要なゴルフ大会が開催されています。

まとめ

モンゴメリー郡は、豊かな自然と高度な都市機能が調和した地域です。経済的に裕福で、教育水準も高く、多様な文化が共存しています。ワシントンD.C.に隣接する立地から、ビジネス、文化、交通などさまざまな面で恩恵を受けています。

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