モンゴルのポーランド侵攻

モンゴルのポーランド侵攻は1240年後半から1241年にかけて展開された一連の戦闘を指します。これは、当時のシロンスク公ヘンリク2世率いるポーランド軍とキリスト教騎士修道会に対するモンゴル帝国の攻撃であり、「バトゥの西征」として知られるモンゴルのヨーロッパ侵攻の重要な一部を成しています。特に、トゥルスクの戦い、フミェルニクの戦い、レグニツァの戦い、そしてモヒの戦いがこの侵攻において際立っています。

前史

この侵攻は、モンゴルの西方遠征軍が1236年に中央アジアを出発し、ヴォルガ・ブルガールやルーシを制圧した後の行動でした。ルーシ諸国を征服したモンゴル軍は、さらなる西へ進軍し、ポーランドおよびハンガリーへ侵入を試みました。この現象は、全ヨーロッパに大きな恐怖をもたらし、教皇グレゴリウス9世がキリスト教徒に対してポーランド救援を命じる詔書を発布するという事態に至りました。こうした流れの中で、ポーランド諸王侯たちは共同防衛のために協力を強いられました。

モンゴル軍の侵攻

モンゴルの侵攻軍は、チャガタイ家のバイダル、オゴデイ家のコデン、ジョチ家のオルダという3人の将軍の指揮の下、1240年後半に活動を開始します。彼らはグループに分かれながら、クラクフを目指して進撃しました。1241年には、サンドミェシュを包囲した後に占領し、さらにポーランドの南部や西部へと進軍し続けました。

特に注目すべきは、フミェルニクの戦いでの勝利です。この戦闘において、ポーランド軍は再び敗北し、指揮官ヴウォジミェシュが戦死しました。この結果、モンゴル軍の進撃は一層加速し、クラクフは包囲された後に焼き払われてしまいます。

その後、モンゴル軍はタルチェクやビトム、ラチブシュなどの都市を襲い、ヴロツワフに進撃します。ここでは、ヘンリク2世がボヘミア軍の救援を待つ中で、モンゴル軍は彼の軍勢を遭遇させるために作戦を展開します。

レグニツァの戦い

4月9日にはレグニツァ近郊で激闘が繰り広げられ、ヘンリク2世が率いるポーランド・ドイツ連合軍とモンゴル軍の間で戦闘が行われました。この戦いでは、ポーランド側は戦力として十分な数を揃えていましたが、組織や経験に勝るモンゴル軍には敵わず、ヘンリク2世は戦死します。モンゴル軍はレグニツァでは占領には至らなかったものの、シロンスク公国の各地を略奪し大きな被害を与えました。

侵攻の影響とその後

モンゴルの侵攻は、ポーランドの統合を妨げる結果となり、ヘンリク2世の死後、ポーランドの分裂状態は更に深刻化しました。この時期、ポーランドとヨーロッパは教皇派と皇帝派の対立の真っ只中にありましたが、モンゴル軍の襲撃により状況は変化します。

1242年にはカアンが死去したことから、モンゴル軍は撤退を余儀なくされ、ポーランドは侵攻後も一定の自主性を持ち続けることができましたが、一方で国家の再統合は長らく叶わぬままでした。

その後のポーランド

その後もモンゴル軍の侵攻は続き、第2次ポーランド侵攻や第3次ポーランド侵攻が実行されましたが、これらは最初の侵攻ほどの影響力を持たなかったと評価されています。ポーランドの地域は急速に衰退したものの、やがて復興し、13世紀末にはモンゴル系のリプカ・タタール人の参加により、ポーランドの軍事戦術は進化していきます。これにより、後のオスマン帝国との戦いへの挑戦に備えることが可能となりました。

ポーランドは、モンゴルによる侵攻から多くを学び、その戦術を改良することで、自らの国防を強化していくことにつながります。最終的には、このような経験がポーランドの歴史における重要な一部となり、その後の戦闘における戦術に影響を与えることになります。

もう一度検索