モンテネグロの歴史

モンテネグロの歴史は、中世初期にスラヴ人がダルマチアの一部（現在のモンテネグロ）に到来したことに始まります。その後のモンテネグロは、激動の歴史を歩むことになります。

現在のモンテネグロの地には、古くからイリュリア人が居住していました。6世紀後半になると、スラヴ人がバルカン半島に移住し、10世紀までにドゥクリャ公国という半独立国を形成します。1077年、ローマ教皇グレゴリウス7世はドゥクリャ公国を独立国として承認し、ヴォイスラヴ王朝のミハイロ王をドゥクリャ王として認めました。しかし、ドゥクリャ王国は東ローマ帝国にも貢物を送っていました。その後、セルビア王国の大公ステファン・ネマニャがドゥクリャを支配するようになります。

1360年、ゼタ独立公国が独立主権を行使します。ゼタ公国は、バルシチ王朝（1360年-1421年）、ツルノイェヴィチ王朝（1421年-1499年）によって統治されました。15世紀以降、オスマン帝国が南と東から侵攻を繰り返しましたが、ゼタ全域を征服することはできませんでした。

近世

1516年、ジュラージュ・ツルノイェヴィチ公は、モンテネグロをツェティニェの主教公による神政政治の国家にしようとした大主教に賛同し退位しました。1697年以降、主教公の職はペトロヴィチ＝ニェゴシュ家が世襲するようになります。主教公は妻帯できないため、その地位は叔父から甥へと継承されました。こうして、オスマン帝国から独立した国家として、モンテネグロ主教領（1696年 - 1852年）が成立しました。ペータル2世は、19世紀前半にモンテネグロを統治した、最も影響力のある主教公の一人です。1851年に主教公となったダニーロ1世は、1852年に結婚してモンテネグロ公（クニャージ）を自称し、領地を世俗的な公国へと変えました（モンテネグロ公国）。このことが、宗主国であるオスマン帝国との間に不和を生み、1852年末には軍事衝突に発展しました。この事件は、クリミア戦争へと繋がっていきます。

1860年にダニーロ1世が暗殺されると、モンテネグロ人はニコラ1世を新たな君主として推戴しました。ニコラ1世は、1861年から1862年までオスマン帝国と戦いましたが、成果は上がりませんでした。しかし1876年、ニコラ1世はセルビア、ロシア帝国と共にオスマン帝国を破り、ベルリン会議によって領土を拡大し、アドリア海の港を獲得しました。しかし、1876年にはオーストリア＝ハンガリー帝国が制海権と沿岸の支配権を握りました。

近代

ニコラ1世の治世（1860年－1918年）には、領土が倍増し、国際的な独立が承認され（1878年）、最初の憲法が制定され（1905年）、君主の格式も「公」から「王」に昇格しました（モンテネグロ王国）。バルカン戦争 (1913年)においても領土を獲得しました。第一次世界大戦では、オーストリア＝ハンガリー帝国のセルビア侵攻に際し、連合国側として参戦しましたが、1916年にオーストリア＝ハンガリー帝国軍に占領され、ニコラ1世は国外へ亡命しました。

ユーゴスラビア時代

1918年、モンテネグロはセルビアに併合され、セルビア、スロベニア、クロアチア王国の一部となり、後にユーゴスラビア王国を形成することになります。第二次世界大戦中、ユーゴスラビアは枢軸国の侵略を受け解体され、モンテネグロはイタリア王国の占領下に置かれました。戦後、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国が成立し、モンテネグロは共和国の一つとなりました。

現代

1991年、ユーゴスラビア崩壊が始まると、モンテネグロはセルビアと共にユーゴスラビア連邦共和国を構成しましたが、ミロ・ジュカノヴィッチ大統領のもとで独立の動きが活発化しました。2003年にはセルビア・モンテネグロに国名が変更され、国家連合となりましたが、2006年 5月21日に行われた住民投票の結果、独立賛成が多数を占め、同年6月3日に独立を宣言しました。2017年にはNATOに加盟しています。

モンテネグロ（Montenegro）の名称は、イタリア語のヴェネツィア方言で「黒い山」を意味します。

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