モーテル・ショット

『モーテル・ショット』：アコースティックなセッションが生んだ名盤

『モーテル・ショット』は、アメリカの夫婦デュオ、デラニー＆ボニーが「デラニー＆ボニー＆フレンズ」名義で1971年に発表したスタジオ・アルバムです。彼らの作品の中でも特にアコースティック楽器を多用したサウンドが特徴であり、その音楽性は後の「MTVアンプラグド」のようなアコースティック演奏の流行に何十年も先んじていたとして、音楽評論家のジェームズ・クリスペル（allmusic.com）から高く評価されています。

多彩な「フレンズ」が集結

アルバムタイトルに冠された「フレンズ」の名の通り、本作にはデラニー・ブラムレットとボニー・ブラムレット夫妻に加え、クレジットに16名ものミュージシャンが名を連ねています。ドラムのジム・ケルトナー、ベースのカール・レイドル、ギターのデイヴ・メイソンやベン・ベネイ、バンジョーのジョン・ハートフォードらが参加。さらに、レオン・ラッセルやグラム・パーソンズ、ボビー・ウィットロック、アイヴァ・ブラムレットといったボーカリストも加わり、厚みのあるアンサンブルを創り上げています。クレジット外ではジョー・コッカーもレコーディングに参加しており、エリック・クラプトンやスティーヴン・スティルスといったロック界の巨匠たちも参加したという逸話も残されています。

バラエティ豊かな収録曲

本作にはトラディショナル・ソングやカバー曲、デラニー＆ボニーのオリジナル曲がバランス良く収録されています。

トラディショナル・ソングとしては「ソウルは死なず」（Where the Soul Never Dies）、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」（Will the Circle Be Unbroken）、「ロック・オブ・エイジ」（Rock of Ages）、「トーキン・アバウト・ジーザス」（Talkin' about Jesus）、「フィーリング・バッド」（Goin' Down the Road Feelin' Bad）など、ゴスペルやフォーク色の強い楽曲が選ばれています。

カバー曲では、ブルースの巨匠ロバート・ジョンソンの「カム・オン・イン・マイ・キッチン」（Come on in My Kitchen）や、チャック・ウィリスの「ドント・ディシーヴ・ミー」（Don't Deceive Me (Please Don't Go)）などが含まれています。特に「カム・オン・イン・マイ・キッチン」と「フィーリング・バッド」は、前年のスタジオ・アルバム『デラニーよりボニーへ』（1970年）でもメドレーの一部として演奏されており、彼らにとって馴染み深い楽曲であったことがうかがえます。

オリジナル曲としては、デラニー単独作の「愛の歌は永遠に」（Never Ending Song of Love）や「シング・マイ・ウェイ・ホーム」（Sing My Way Home）、カール・レイドルとの共作による「ロング・ロード・アヘッド」（Long Road Ahead）、レオン・ラッセルとの共作である「ロング・ウェイ・フロム・ホーム」（Lonesome and a Long Way from Home）などが収録されています。

最大のヒット曲と広がる影響

このアルバムからシングルカットされた「愛の歌は永遠に」は、デラニー＆ボニーにとってキャリア最高のヒット曲となりました。全米シングルチャートで13位を記録し、広くリスナーに受け入れられました。

この曲はデラニー＆ボニーだけでなく、他のアーティストにも影響を与えました。特に、イギリスのグループであるニュー・シーカーズが1971年に発表したカバーバージョンは、全英シングルチャートで5週連続2位という大ヒットを記録し、原曲とともに世界的に知られることとなりました。

アルバムに込められた思い

ボニー・ブラムレットは、アルバムのライナーノーツにメッセージを寄せており、このセッションで感じたポジティブな感覚が、聴く人にも少しでも伝わることを願う言葉を綴っています。この言葉は、リラックスした雰囲気の中で行われたとされるレコーディングセッションの様子や、参加ミュージシャンたちの温かい交流を示唆しているかのようです。

『モーテル・ショット』は、アコースティックサウンドを基調としながらも、カントリー、ブルース、ゴスペル、ソウルといった様々なルーツミュージックが融合した、デラニー＆ボニー＆フレンズならではの魅力に溢れた作品と言えるでしょう。

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