カール・レイドル

カール・ディーン・レイドル

カール・ディーン・レイドル（Carl Dean Radle, 1942年6月18日 - 1980年5月30日）は、1960年代後半から70年代にかけて、アメリカの音楽シーンで絶大な信頼を集めたベーシストです。オクラホマ州タルサで生まれたレイドルは、その短い生涯の中で、ロック、ブルース、スワンプ・ロックなど多様なジャンルにおいて、数え切れないほどのレコーディングやツアーに参加しました。

彼のベースプレイは、派手さよりも楽曲の基盤をしっかりと支えることに重きを置いていました。時にシンプルで反復的なフレーズは、一聴すると地味に思えるかもしれませんが、それが曲全体に安定感とグルーヴを与え、多くのミュージシャンからその音楽的貢献度を高く評価されました。ゴールドディスクやプラチナディスクに輝いた多くのヒット作品で彼のベースサウンドを聴くことができます。

レイドルのキャリアにおいて、最も重要かつ長期にわたる関係を築いたのがエリック・クラプトンでした。その始まりは1969年のデラニー＆ボニーのツアーバンドにさかのぼります。1970年には、クラプトン、ドラマーのジム・ゴードン、そして当時オールマン・ブラザーズ・バンドに在籍していたギタリストのデュアン・オールマン、キーボードのボビー・ウィットロックと共に、伝説的なバンド、デレク・アンド・ザ・ドミノスを結成し、ロック史に残る名盤『いとしのレイラ』を生み出しました。

ドミノス解散後も、レイドルは1979年までクラプトンのソロ活動を支え続けました。クラプトンが一時音楽活動から離れていた時期には、他のミュージシャンと録音した自身の演奏テープを提供し、彼の音楽復帰を間接的にサポートしました。単なる演奏者としてだけでなく、クラプトンのアルバムではアレンジャーとしても手腕を発揮し、特に「マザーレス・チルドレン」のような楽曲に貢献しています。また、アルバム『ノー・リーズン・トゥ・クライ』では、アソシエイト・プロデューサーとしてクレジットされています。1974年から1979年にかけては、同じオクラホマ出身のキーボード奏者ディック・シムズ、ドラマーのジェイミー・オールデイカーと共に、クラプトンのツアーバンドの強固なリズムセクションとして活躍しました。

クラプトン以外にも、レイドルは多くの著名なアーティストたちと共演しました。1970年から1972年にかけてだけでも、デイブ・メイソン、J.J.ケイル、ジョージ・ハリスン、ジョー・コッカー、レオン・ラッセル、バディ・ガイなど、錚々たる顔ぶれが並びます。1970年にはジョー・コッカーの歴史的な『マッド・ドッグス&イングリッシュメン』ツアーに参加。1971年8月1日には、ジョージ・ハリスンとラヴィ・シャンカルが主催した『バングラデシュ難民救済コンサート』に出演し、その模様はドキュメンタリー映画やライヴアルバムにも記録されています。また、1976年のザ・バンドの解散コンサート『ラスト・ワルツ』にも参加し、映画にもその姿が映っています。

カール・ディーン・レイドルは、残念ながら1980年5月30日、故郷クレアモアの自宅にて、わずか37歳の若さでこの世を去りました。死因はアルコールと麻薬の過剰摂取でした。しかし、彼の音楽への貢献は忘れられることなく、2006年にはオクラホマ音楽の殿堂入りを果たしています。

彼の参加した主な作品の一部を以下に挙げます。

デレク・アンド・ザ・ドミノス

『いとしのレイラ』 - Layla and Other Assorted Love Songs（1970年）
『イン・コンサート』 - In Concert（1973年）
『レイラ・セッションズ』 - The Layla Sessions: 20th Anniversary Edition（1990年）
『ライヴ・アット・ザ・フィルモア』 - Live at the Fillmore（1994年）

エリック・クラプトン

『エリック・クラプトン・ソロ』 - Eric Clapton（1970年）
『461 オーシャン・ブールヴァード』 - 461 Ocean Boulevard（1974年）
『安息の地を求めて』 - There's One in Every Crowd（1975年）
『ノー・リーズン・トゥ・クライ』 - No Reason to Cry（1976年）
『スローハンド』 - Slowhand（1977年）
『バックレス』 - Backless（1978年）

このリストは彼の膨大な功績のごく一部に過ぎません。カール・ディーン・レイドルは、多くの名盤を影で支え、音楽史に確かな足跡を残した偉大なベーシストです。

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