モーラン・ハーン

モーラン・ハーン

モーラン・ハーン（1448年 - 1466年）は、モンゴルの第31代ハーンであり、北元としては第17代ハーンに位置づけられます。彼はタイスン・ハーンの子であり、マルコルギス・ハーンの異母兄にあたります。漢文史料では、即位前のモーラン・ハーンはトグス太子と記録されています。『蒙古源流』においては、ムラン・ハーンと表記されています。

生涯

1448年、モーラン・ハーンはタイスン・ハーンとアルタガルジン・ハトンとの間に誕生しました。しかし、3歳の時に両親が離縁したため、彼は母方のゴルラト部で育つことになります。17歳になった1464年、母方の祖父であるチャブダンが亡くなると、ゴルラト部のハブチルという人物に仕える身となりました。その後、ハブチルの家に災いが起きた際、預言者や占い師から「ボルジギン氏族に悪いことをした天罰である」と告げられたため、ハブチルはモーランをオンリュート部のモーリハイのもとに送りました。

1465年、当時のハーンであったマルコルギス・ウケクト・ハーンがボライ太師によって殺害されるという事件が起こります。これを受けて、モーランはモーリハイによって新たなハーンとして擁立されました。

しかし、モーラン・ハーンの治世は長くは続きませんでした。1466年、ソロンガスのフトゥバガという者がモーラン・ハーンのもとに現れ、「モーリハイがあなたの妻であるサマンディに色目を使い、兵を起こして攻めてくるだろう」という偽りの情報を伝えました。同時に、フトゥバガはモーリハイにも「ムラン・ハーンはあなたを殺し、あなたの領土を奪おうとしている」と嘘を吹き込み、両者を対立させました。この策略により、モーラン・ハーンはモーリハイとの戦いに敗れ、殺害されるという悲劇的な結末を迎えます。その後、モーリハイはモーラン・ハーンの妻の一人であるモングチェイ・ハトンからフトゥバガの陰謀を知り、フトゥバガを処刑しました。

死後

モーラン・ハーンの死後、モーリハイは新たなハーンをすぐに擁立せず、9年間の空位期間が続きました。その後、タイスン・ハーンの弟であるマンドゥールンがハーン位に就くことになります。

参考文献

森川哲雄「明代のモンゴル 分裂と抗争の時代」『北アジア史』収録（竺沙雅章監修、アジアの歴史と文化7、同朋舎、1999年4月）
岡田英弘訳注『蒙古源流』（刀水書房、2004年、ISBN 4887082436）
岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』（藤原書店、2010年11月）
和田清『東亜史研究(蒙古篇)』(東洋文庫、1959年)

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