ヤイトハタ

ヤイトハタ (Epinephelus malabaricus)

ヤイトハタは、スズキ目ハタ科に属する大型の海水魚です。インド太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布し、日本では南日本の沿岸で見られます。その特徴的な体色と模様、そして食用としての価値から、人々の関心を集める魚です。

名称の由来

和名である「ヤイトハタ」は、体表に散在する黒褐色の斑点が、まるで灸の跡のように見えることに由来します。この斑点が特徴的で、他のハタ類と見分ける際の重要なポイントとなります。別名として「ニセヒトミハタ」とも呼ばれます。英名では、blackspot rockcod、estuary rockcod、giant rock codなど、複数の名前で呼ばれています。

分布と生息環境

ヤイトハタは、紅海、東アフリカからトンガ諸島まで、インド太平洋の温暖な海域に広く分布しています。稀に地中海でも発見されることがあります。日本では、兵庫県沖から琉球列島にかけての沿岸域に生息しています。水深2mから150mまでの多様な環境に適応し、ラグーン、マングローブ林、サンゴ礁、岩礁、砂地、泥地など、様々な場所に生息します。定住性が高く、あまり長距離を移動することはありません。幼魚は汽水域にも進出することが知られています。

形態の特徴

ヤイトハタは、全長234cmに達する大型のハタですが、一般的には100cm程度の個体が多く見られます。体色は淡灰色から淡褐色で、体表には黒褐色の斑点が多数散在しており、成長とともにその数が増加します。また、白い斑模様も見られます。体側面には茶色の斜め帯があり、幼魚の時には5本の暗褐色の横帯が見られますが、成長とともに消失します。尾鰭の後縁は丸みを帯びています。背鰭は11棘と14〜16軟条、臀鰭は3棘と8軟条、胸鰭は18〜20軟条で構成されています。同じハタ科のチャイロマルハタとよく似ていますが、ヤイトハタは白い斑模様があり、斑点が黒く瞳孔よりも小さいことで見分けることができます。

生態

ヤイトハタは雌性先熟の雌雄同体であり、成長の過程で雌から雄へと性転換します。食性は肉食性で、魚類、甲殻類、頭足類などを捕食します。また、ヤイトハタには多くの寄生虫が生息しており、特に単生綱のPseudorhabdosynochus属の寄生虫が複数確認されています。

人間との関わり

ヤイトハタは、市場にはあまり多くは出回りませんが、味の良い食用魚として知られています。特に、鍋料理や刺身で賞味されることが多いです。身に特有の風味がありますが、同属のクエに比べるとやや劣ると評されることがあります。近年では養殖も盛んに行われており、同属のクエやマハタと交配させた「クエハタ」などの雑種も生産されています。このクエハタは、成長が早く、養殖しやすい特徴を持っています。

画像

[ヤイトハタの画像1]
[ヤイトハタの画像2]

参考文献

西東社 豊田直之、西山徹、本間敏弘著「釣り魚カラー図鑑」

関連項目

海水魚
* 魚の一覧

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