ヤグアラサウルス亜科

ヤグアラサウルス亜科 (Yaguarasaurinae) について

ヤグアラサウルス亜科は、後期白亜紀に生息していたモササウルス科に属する海生爬虫類のグループです。この亜科に分類される生物の化石は、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、そしてヨーロッパで発見されており、その地理的な分布の広さが伺えます。現在、この亜科には、ヤグアラサウルス (Yaguarasaurus)、ラッセロサウルス (Russellosaurus)、ロメオサウルス (Romeosaurus) の3つの属が知られています。

かつて、ヤグアラサウルスとラッセロサウルスはテティサウルス亜科に分類されていましたが、ロメオサウルスが発見され、ヤグアラサウルス亜科が確立されたことで、これらの属が再分類されました。ヤグアラサウルス亜科は、近縁のテティサウルス亜科と同様に、プレシオペダル（原始的）な特徴を持っており、後期のモササウルス科ほど海への適応が進んでいないと考えられています。一般的に、この亜科の生物は、後の巨大なモササウルス科と比較して小型であったとされますが、ヤグアラサウルス自体は比較的大きな個体に成長したことがわかっています。

ヤグアラサウルス亜科は、チューロニアン期に出現し、サントニアン期まで繁栄しましたが、より進化したハイドロペダル（水中生活により適応した）なモササウルス科が出現したカンパニアン期に絶滅しました。ヤグアラサウルス亜科の名前は、ヤグアラサウルス属に由来しており、コロンビアの町「Yaguará」とギリシャ語の「トカゲ」を意味する言葉が組み合わさって名付けられました。

形態と特徴

ヤグアラサウルス亜科は、モササウルス科の進化史において初期段階にあたる、原始的な小型から中型のグループです。特に、ヤグアラサウルス・コロンビアヌスは、この亜科で最大の種であり、全長5メートルにも達する最大の骨格と、頑強な頭骨が発見されています。これにより、原始的なモササウルス科が必ずしも小型ではなかったことが示されました。この亜科の四肢はプレシオペダルな状態であり、後のモササウルス科ほど海洋生活に適応しておらず、体型も厚みがなかったと推測されています。

Palci et al. (2013) は、ヤグアラサウルス亜科を「ラッセロサウルス、ロメオサウルス、ヤグアラサウルスの共通祖先と、その全ての子孫」と定義しています。この亜科には、以下のような明瞭な特徴があります。

外鼻孔の後端が前頭骨に届かない（前頭骨に鼻孔に対する窪みがない）。
頬骨の下顎枝が直角をなし、関節部分で腹側後方への明瞭な突起を持つ。
方形骨に浅い窪みがある。
歯骨の内側部が低く、内側から見ると歯根が大きく露出している。
歯骨が最前方の歯の前へ突出する（ラッセロサウルスでは逆方向に突出する）。

系統

ヤグアラサウルス亜科は、ロメオサウルスの記載時に設立されました。以前はテティサウルス亜科に分類されていた属が含まれており、この亜科の設立によって、より正確な分類が可能になりました。以下の系統図は、Palci et al. (2012) に基づいており、ヤグアラサウルス亜科内の関係と、テティサウルス亜科との近縁性を示しています。

分類と種

ヤグアラサウルス亜科には、以下の3属が含まれます。

ヤグアラサウルス (Yaguarasaurus)
ヤグアラサウルス・コロンビアヌス (Yaguarasaurus columbianus)
ラッセロサウルス (Russellosaurus)
ラッセロサウルス・コヘニ (Russellosaurus coheni)
ロメオサウルス (Romeosaurus)
ロメオサウルス・フマネンシス (Romeosaurus fumanensis)
ロメオサウルス・ソルビニイ (Romeosaurus sorbinii)

出典

Palci et al. (2013)
Palci et al. (2012)

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