チューロニアン

チューロニアン（チューロン期）とは

チューロニアン（Turonian）は、後期[[白亜紀]]を区分する地質時代の一つであり、約9390万年前から8980万年前（誤差あり）の期間を指します。地質学においては、「チューロン階」という用語も存在しますが、これは時代区分ではなく、地層の単位（層序名）を指すものです。時代を示す「チューロン期」と層序を示す「チューロン階」は、対をなす関係にあります。

チューロニアンの定義

チューロニアンは、1842年にフランスの古生物学者アルシド・ドルビニによって定義され、フランスのトゥーレーヌ州にあるトゥールという都市にちなんで命名されました。この地域が模式地とされています。

チューロニアンの開始は、地層中でアンモナイトの一種であるWutinoceras devonenseが初めて出現する場所と定義されています。国際標準模式層断面及び地点（GSSP）は、アメリカ合衆国コロラド州プエブロ近郊のロックキャニオン背斜に位置しています。

チューロニアンの終わり（コニアシアンの開始）は、イノセラムス科の二枚貝であるCremnoceramus rotundatusが地層中で初めて出現する場所と定義されます。

チューロニアンの細分化

チューロニアンは、前期（下部）、中期（中部）、後期（上部）の3つの亜期に区分されることがあります。テチス海地域では、以下のアンモナイトのバイオゾーンが認められています。

Subprionocyclus neptuni のゾーン（上部）
Collignoniceras woollgari のゾーン（中部）
Mammites nodosoides のゾーン
Watinoceras coloradoense または Watinoceras devonense のゾーン（下部、2種はほぼ同時期に出現）

また、イノセラムス科の二枚貝であるI. schloenbachi, I. lamarcki, I. labiatusも重要な示準化石です。イノセラムスは、現代のイガイに近縁の二枚貝です。

チューロニアン期の環境

チューロニアンの前の時代であるセノマニアンとの境界では、海面上昇に伴う大規模な海洋無酸素事変（OAE 2）が発生しました。この事変は大西洋とテチス海を中心に起こり、海洋生物の絶滅パターンに差異はあるものの、日本近海の生物相にも影響を与えました。北海道では、アンモナイトがこの境界から20万年から50万年後に回復を見せています。

OAE 2とそれに続く新たな種の出現が、チューロニアンの始まりを定義する重要な要素となっています。国際地質科学連合の白亜系層序学小委員会では、OAE 2における炭素同位体比（δ13C値）の正シフトの終了が、セノマニアン/チューロニアン境界と定義されています。

炭素・酸素同位体比の研究から、チューロニアン後期からコニアシアンにかけて海水準が低下し、地球規模で気温が低下したことが示されています。後期[[白亜紀]]全体は寒冷化傾向にありましたが、火山活動による二酸化炭素の放出で一時的な温暖化が繰り返されたと考えられています。

日本におけるチューロニアン

日本では、北海道の中部蝦夷層群三笠層がセノマニアンから中部チューロニアンに、上部蝦夷層群が上部チューロニアンに相当します。この時期には、ニッポニテスなどの異常巻きアンモナイトが出現し、ユーバリセラス、オビラセラス、シューパロセラスなどの肋が発達したアンモナイトも生息しました。

チューロニアン期の主な生物

チューロニアンには、多様な生物が生息していました。以下にその一部を紹介します。

アンモナイト: 日本でも多くのアンモナイトの化石が産出しています。
曲竜類: 装甲を持つ恐竜の一種です。
鳥類: 現代の鳥類の祖先にあたるグループです。
角竜類: トリケラトプスなどの角を持つ恐竜です。
ワニ形上目: 現代のワニの祖先にあたるグループです。
哺乳類: 初期段階の哺乳類が生息していました。
鳥脚類: イグアノドンなどの植物食恐竜です。
首長竜類: 海に生息した大型の爬虫類です。
翼竜: 空を飛んだ爬虫類です。
有鱗目: トカゲやヘビの祖先にあたるグループです。
竜脚類: ブラキオサウルスなどの巨大な植物食恐竜です。
非鳥類型獣脚類: ティラノサウルスなどの肉食恐竜です。

まとめ

チューロニアンは、地球の歴史において重要な出来事が重なった時代であり、海洋無酸素事変、生物の多様化、そして気候変動など、地球環境が大きく変化しました。この時代の研究は、地球の過去を理解する上で非常に重要です。

参考資料

Gradstein, F.M.; Ogg, J.G. & Smith, A.G.; 2004: A Geologic Time Scale 2004, Cambridge University Press.
Kennedy, W.J.; Walaszczyk, I. & Cobban, W.A.; 2005: The Global Boundary Stratotype Section and Point for the base of the Turonian Stage of the Cretaceous: Pueblo, Colorado, U.S.A., Episodes 28(2): pp 93–104.

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