ヤナギラン

ヤナギラン（柳蘭）

ヤナギラン（学名：Chamerion angustifolium）は、アカバナ科ヤナギラン属に分類される多年草です。アカバナ属に分類されることもあります。その名の通り、柳のような葉と蘭のような花が特徴です。

特徴

ヤナギランの茎は、薄い緑色または薄紅紫色を帯び、高さ0.5〜1.5メートルにまで成長します。茎はほとんど枝分かれせず、まっすぐ上に伸びるのが特徴です。葉は互い違いに生え、総状花序には濃紫色の花が下から順に咲き上がります。花弁は4枚、雄しべは8本あり、開花時期は7月から9月にかけてです。果実は細長く、白い綿毛を付けた種子が風に乗って散布されます。また、ベニスズメの幼虫の食草としても知られています。

和名の由来は、葉が柳に似ていることと、花が蘭を連想させることに由来します。花言葉は「集中する」と「焦点」です。園芸品種も存在し、苗が販売されています。実生、株分け、挿し木によって増やすことができます。

分布

ヤナギランは、ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど、北半球の温帯から寒冷な地域に広く分布しています。特に、北米の針葉樹林帯では、山火事跡に大群落を形成することがあり、「Fireweed」と呼ばれています。カナダのユーコン準州では「準州の花」に、フィンランドの南ポフヤンマー県では「県花」に指定されています。基準標本は北ヨーロッパのものです。

日本では、北海道から本州以北の亜高山帯から山地帯の草地や礫地に自生しています。山火事の跡地、森林の伐採跡地、林道沿いの湿った草地などで群落を形成することが多く、山小屋周辺やスキー場などの裸地にいち早く侵入します。しかし、土壌が安定し、他の植物が生育すると、群落は次第に姿を消してしまうこともあります。

自治体指定の花

ヤナギランは、以下の自治体で指定の花となっています。

ユーコン準州（カナダ）
南ポフヤンマー県（フィンランド）
旧高根村（岐阜県、現在は高山市に合併）

日本の群生地

田中澄江の著書『花の百名山』では霧ヶ峰を代表する花の一つとして、『新・花の百名山』では蓼科山を代表する花の一つとして紹介されています。尾瀬沼畔の大江湿原にある「ヤナギランの丘」は、ヤナギランの名所として知られています。群馬県片品村の武尊牧場では、夏に「ヤナギランまつり」が開催され、多くの観光客で賑わいます。また、野沢温泉スキー場の上ノ平高原には「ヤナギランガーデン」があり、約30,000株のヤナギランが咲き誇ります。

近縁種

ヤナギランには、以下のような近縁種が存在します。

ウスゲヤナギラン（Chamerion angustifolium subsp. circumvagum）
ヒメヤナギラン（Chamerion latifolium、別名：キタダケヤナギラン）

種の保全状態評価

日本では、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けており、その希少性が示されています。

絶滅：東京都南多摩（西多摩は絶滅危惧II類）、愛知県（過去の標本はあるものの、現存が確認できない）
絶滅危惧II類：秋田県、山形県、宮城県、埼玉県（秩父市の亜高山帯）
準絶滅危惧（NT）：栃木県

食経験

ヨーロッパでは、古くからヤナギランを薬用ハーブとして利用してきました。特に、前立腺肥大症、失禁、炎症を緩和する効果があるとして、ハーブティーとして親しまれています。近年では、日本でも健康食品向けの素材として販売されています。

ヤナギランに含まれるエラグタンニンの一種であるエノテインBは、前立腺肥大症や夜尿症の緩和、vivo試験での長寿効果が報告されており、臨床試験も実施されています。

化粧品原料として

LUCAS MEYER COSMETICS社が、ヤナギランエキスを配合した化粧品原料「Defenscalp」を開発・供給しています。ヤナギランのマーカー成分であるエノテインBは、5α-リダクターゼ活性阻害作用により、皮脂の産生と蓄積を抑制する効果が報告されており、頭髪ケア製品や化粧品の原材料として利用されています。

関連画像

[ヤナギランの画像]

脚注

[脚注の記述]

関連項目

アカバナ科
成分本質 (原材料) では医薬品でないもの-植物由来物等-後半

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