ユアホスト

ユアホスト：奇跡のサラブレッド物語

ユアホスト（Your Host、1947年 - 1961年）は、アメリカ合衆国で活躍したサラブレッド競走馬にして、後に名種牡馬として名を馳せた伝説的な馬です。その生涯は、幾多の困難を克服した奇跡の物語として、競馬史に燦然と輝いています。

困難な始まり

映画会社MGMの創設者の一人であるルイス・B・メイヤーの牧場で生まれたユアホストは、恵まれた環境とは程遠いスタートを切りました。栗毛のサラブレッドでしたが、父アリバイはイギリスで未出走、母ブードワールも1勝馬という平凡な血統でした。さらに、ユアホスト自身も、生まれたときから容姿に難がありました。右目と右耳は左側に比べて持ち上がり、首はねじれ、肩甲骨の間はくぼみ、4本の脚の足先は白く染まっていました。当時、この様な外見は不吉の兆候と見なされていたのです。性格も神経質で頑固、調教は思うように進みませんでした。

2歳になる前には、命に関わる重病を患い、獣医の懸命な治療と自身の強い生命力で克服。こうした数々のハンデを背負いながら、ユアホストは競走馬としての道を歩み始めます。

競走馬としての活躍

1949年、メイヤーの娘婿である映画監督ウィリアム・ゲーツを馬主に迎え、西海岸でデビュー。2歳時はデルマーフューチュリティステークスやカリフォルニアブリーダーズチャンピオンステークスを制覇するなど、早くからその才能の片鱗を見せました。

奇異な外見から「オールド・サイドワインダー」「ザ・ツイスター」などと呼ばれたユアホストは、3歳になるとクラシック路線に挑戦。重要なステップとなるサンフェリペステークスとサンタアニタダービーを制し、ケンタッキーダービーの有力候補に躍り出ました。この頃には、「ザ・マグニフィシエントクリップル」「ザ・フリーク」など、皮肉と畏敬の念を込めたあだ名が付けられるようになりました。

しかし、ケンタッキーダービーでは、ミスタートラブルとの激しい競り合いの末、スタミナ切れを起こして9着に敗退。その後はクラシック戦線から離れ、カリフォルニアに戻ってマイル路線を中心に活躍し、ケントステークス、サンクスギビングデイハンデキャップ、シェリダンハンデキャップなどを勝利しました。

4歳時、サンタカタリーナハンデキャップでは130ポンドというトップハンデを背負いながらも、レース中に鞍がずり落ちるアクシデントに見舞われます。それでも騎手を振り落とすことなく、そのままレースを続け、トラックレコードで勝利を収めたのです。

死を乗り越え、種牡馬へ

しかし、栄光の瞬間は長くは続きませんでした。サンパスカルハンデキャップの後、ユアホストは右前脚の尺骨を4箇所骨折し、右肩も粉砕するという、まさに瀕死の重傷を負います。安楽死も考慮されましたが、ユアホスト自身の強い生命力、そしてゲーツの決断により、高額な治療費を投じて懸命な治療が行われました。ユアホストは治療に耐え抜き、一命を取り留めたのです。

競走馬としては引退を余儀なくされましたが、種牡馬として新たな道を歩み始めます。

種牡馬としての成功

初年度産駒からステークス勝ち馬を輩出するなど順調なスタートを切り、1957年には後にアメリカ殿堂入りを果たす名馬ケルソを送り出しました。さらに、ウインディサンズなど、優れた種牡馬を次々と輩出し、その血統は現代競馬においても大きな影響を与え続けています。母の父としても活躍し、その子孫には日本の名馬トウショウボーイも含まれます。

1961年、15歳で生涯を終えたユアホスト。その生涯は、決して恵まれたものではありませんでしたが、並外れた精神力と競走能力、そして類まれな繁殖能力によって、競馬史に不滅の功績を残しました。その名前は、困難を乗り越えて成功を掴む象徴として、いつまでも人々の記憶に刻まれ続けるでしょう。

もう一度検索