ユディトとその侍女 (ジェンティレスキ、カポディモンテ美術館)

アルテミジア・ジェンティレスキの『ユディトとその侍女』は、1645年から1650年の間に制作された油彩作品です。この絵画は、旧約聖書外典「ユディト記」の一場面を描いており、勇敢な女性ユディトが敵将ホロフェルネスを討ち取る物語を題材にしています。現在、ナポリのカポディモンテ美術館に所蔵されており、ジェンティレスキが同じテーマで描いた3つのバージョンのうちの一つとして知られています。

物語の背景

「ユディト記」によれば、イスラエルの町ベトゥリアはアッシリアの将軍ホロフェルネスによって包囲されていました。ホロフェルネスは水源を絶つという非道な戦術を用い、住民は苦境に立たされていました。そこに現れたのが、若い未亡人ユディトです。彼女は喪服を脱ぎ捨て、侍女を伴って敵陣に乗り込みます。

ユディトはホロフェルネスに近づき、ベトゥリアを見限ったと偽って彼の信頼を得ます。彼女の美貌に魅了されたホロフェルネスは、彼女と酒を酌み交わすうちに眠り込んでしまいます。ユディトは隠し持っていた刀でホロフェルネスの首を切り落とし、それを袋に入れてベトゥリアに凱旋します。翌日、指揮官を失ったアッシリア軍は戦意を喪失し、撤退。ベトゥリアは救われることになります。

絵画の場面

この作品は、ホロフェルネスの首が切られた直後の場面を描いています。ユディトの侍女が首を袋に入れようとしており、ユディトは周囲を警戒しています。この場面は、ユディトの勇気と決意を象徴的に表現しており、彼女の強靭な意志が伝わってきます。

他の類似作品

アルテミジア・ジェンティレスキは、このテーマで同様の構図を持つ作品を3点制作しています。最初の作品は1623年から1625年に描かれ、現在はデトロイト美術館に所蔵されています。2番目の作品は1640年代初めに描かれ、カンヌのラ・カストル美術館にあります。最近の研究によると、本作は17世紀後半にヴェネツィアの富裕な商人ジョヴァンニ・アンドレア・ルマーガのコレクションにあったことが示唆されています。

これらの作品は、アルテミジア・ジェンティレスキの卓越した画力と、物語の劇的な瞬間を捉える能力を物語っています。彼女の描くユディトは、単なる聖書の登場人物ではなく、力強く自立した女性の象徴として、今日でも多くの人々を魅了し続けています。

まとめ

『ユディトとその侍女』は、聖書の物語を題材にしただけでなく、アルテミジア・ジェンティレスキ自身の力強い画風と、女性の視点からの表現が際立つ作品です。彼女の作品は、バロック美術の傑作として、その芸術的価値だけでなく、歴史的な意義も高く評価されています。

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