ユディトとホロフェルネス (ゴヤ)

『ユディトとホロフェルネス』

概要

『ユディトとホロフェルネス』は、スペインのロマン主義の巨匠フランシスコ・デ・ゴヤによって1820年から1823年の間に完成された油彩作品であり、特に有名な《黒い絵》の一つです。この作品はマドリードのプラド美術館に所蔵されており、ゴヤが自身の邸宅であるキンタ・デル・ソルドの壁面に描いたもので、彼の晩年に描かれました。

主題

本作の主題は『旧約聖書』の「ユディト記」に基づいています。物語の中心には美しい未亡人ユディトが登場し、彼女はアッシリアの王ネブカドネザル2世の軍に包囲されたイスラエルの町ベツリアに住んでいます。ユディトは信仰を持つ強い女性であり、町の指導者オジアスが降伏を決意する中、ユディトは民を励まし、孤軍奮闘することを決意します。彼女はホロフェルネスの陣営に赴き、王の酒宴に招かれます。

ユディトはホロフェルネスを誘惑し、酔わせた後に彼の剣を使って彼の首を切り落とします。この瞬間は作品の核心であり、力強い女性の姿勢が描かれています。

作品の特徴

ゴヤはユディトがホロフェルネスの首を切断する緊迫した瞬間を捉えています。ユディトは画面の中央に立ち、彼女の右手には剣が握られ、彼女の存在が画面全体に強い影響を与えています。ホロフェルネスの姿は画面の隅にわずかに見えるだけですが、ユディトの力強さと冷静さが強調されています。

この作品では、暗闇に包まれた背景からユディトだけが光を浴びて浮かび上がっており、彼女の顔や手の部分が特に際立っています。ゴヤはその表現において、通常は含まれる宝石や豊かさを排除し、ユディトの身体の動きと内面的な強さに焦点を当てています。色彩は控えめで、グリザイユ調に仕上げられており、シンプルな中にもしっかりとした筆致が見て取れます。

解釈

『ユディトとホロフェルネス』は、ゴヤの他の作品『我が子を食らうサトゥルヌス』と似たテーマを持っています。両作品は邸宅キンタ・デル・ソルドの壁を挟んで配置され、権力の恐怖や、支配者の地位を失うことへの暗喩が示されています。ユディトとサトゥルヌスの物語には、古代からの権力の象徴が現れており、サトゥルヌスの子供を食らう恐れとユディトの逆転した立場が、ゴヤ作品の中における権力闘争の象徴となっています。

図像的源泉

ゴヤの作品には、17世紀の匿名の画家が描いたスケッチからの影響が見られるとされています。また、ユディトはその時代において聖書の女主人公でありながらファム・ファタールとしても見ることができる存在であり、彼女の描写は様々な解釈を生み出しています。

来歴

1823年、ゴヤがフランスに亡命した際、彼の作品は孫に譲渡され、最終的にはプラド美術館に収蔵されることとなりました。作品の保存や展示の過程で、多くの変遷を経たこの絵画は、現在も多くの人々に感動を与え続けています。

結論

『ユディトとホロフェルネス』は、フランシスコ・デ・ゴヤの卓越した技術と、女性の力強さを描いた重要な作品です。聖書の物語を基にしつつ、彼の独自の解釈が加わることで、時代を超える普遍的なテーマを具現化しています。

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