ユナイテッド航空859便オーバーラン事故

ユナイテッド航空859便オーバーラン事故

1961年7月11日、ネブラスカ州エプリー飛行場発、コロラド州ステープルトン国際空港行きのユナイテッド航空859便（ダグラスDC-8-12型機）が、ステープルトン国際空港への着陸時に滑走路を逸脱し、炎上するという痛ましい事故が発生しました。この事故により、乗員乗客122名のうち17名と、地上の1名が命を落としました。

事故の詳細

事故機（登録番号N8040U）は、着陸後に滑走路を逸脱し、建設機械を含む複数の空港車両に衝突。その結果、地上にいた1名を含む18名が死亡し、84名が負傷するという大惨事となりました。

859便は飛行中に油圧系統の不具合に見舞われました。乗務員は定められたチェックリストに従い、油圧の不具合に対処した後、通常の着陸準備を行いました。着陸自体は正常に行われましたが、問題は着陸後の減速操作時に発生しました。エンジンのスラストレバーを逆噴射の位置に動かした際、左側の第1エンジンのスラストリバーサー（逆噴射装置）のバケットが正常に展開しなかったのです。

通常、逆噴射装置はエンジンの推力を前方から後方へ反転させることで、着陸時の減速を助けます。しかし、今回の事故では、第1エンジンのバケットが展開せず、推力を前方へ向ける状態になったため、左側の第1エンジンと第2エンジンは通常推力、右側の第3エンジンと第4エンジンは逆推力という非対称な状態になりました。この非対称な推力により、機体は右方向へ逸脱し始めました。機体は滑走路を逸脱し、建設中の新しい誘導路に接触、右側のメインギアが破損しました。さらに、ノーズギアも破損し、右翼の燃料タンクが破裂、火災が発生しました。

航空委員会（CAB）の報告書によると、逆噴射装置が正常に作動しなかった要因は、副操縦士が逆推力インジケーターランプの監視を怠ったためであると結論付けられました。

事故による18名の死者のうち、16名は一酸化炭素中毒が原因でした。また、1名の高齢女性は避難中に両足首を負傷し、その後ショックにより亡くなりました。

事故対応

事故発生後、直ちに救助活動が開始されました。しかし、空港消防署は人員不足に加えて、1940年代に導入された古い機材を使用しており、対応が困難な状況でした。さらに、近隣の空軍基地やデンバー市の消防施設からの応援も遅れ、被害の拡大を招きました。

厳しい状況下ではありましたが、消防隊員たちは適切かつ勇敢な行動で、多くの人命を救いました。その献身的な活動は、後に広く賞賛されました。

事故から得られた教訓

この事故は、航空機における油圧系統の不具合や、逆噴射装置の故障といった機体の不具合と、乗員の監視不足が複合的に重なり発生した事故でした。また、空港の消防体制の強化や、緊急時における迅速な連携の重要性も浮き彫りになりました。この事故を教訓に、航空安全対策のさらなる強化が必要不可欠です。

脚注

事故に関する詳しい情報は、アメリカ国立運輸安全委員会（NTSB）の報告書などを参照してください。

関連項目

逆推力装置が原因の事故
TAM航空3054便オーバーラン事故
TAM航空402便離陸失敗事故
日本航空350便墜落事故
ラウダ航空004便墜落事故

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