ユリシーズ (探査機)

ユリシーズ (Ulysses)

ユリシーズは、太陽の全緯度領域を探査するよう設計された無人探査機で、1990年10月6日にNASAとESAの共同プロジェクトとして、スペースシャトル・ディスカバリーのミッションSTS-41において打ち上げられました。この探査機は、オデュッセウスのラテン語から名付けられました。ユリシーズのミッションは、地球の視点からは観測できない太陽の北極や南極の環境を直接観測することを目的としています。

計画の背景

ユリシーズの開発は、太陽を低緯度からしか観測できなかった以前の研究に対する反省から始まりました。地球の軌道平面に対する太陽の赤道の傾斜角は7.25度であるため、太陽周回軌道に直接投入するには、特別な打ち上げ機が必要でした。1970年代の探査機たち（マリナー10号、ボイジャー1号・2号など）は、惑星間の重力アシストを利用するスイングバイ技術を用いていましたが、ユリシーズは黄道面から大きく離れる必要がありました。

最初の計画では、2機の国際太陽極ミッション探査機が打ち上げられる予定でしたが、1981年にアメリカ側の1機がキャンセルされ、ユリシーズとして修正されました。その後、NASAは放射性電池や打ち上げ手段を提供し、ESAは探査機の開発を担当しました。

打ち上げと軌道投入

ユリシーズは最初に地球の低軌道に送り出され、その後、固体燃料ロケットブースターによって木星へ向かいました。打ち上げ時の速度は、当時の人類が作り出した物体の中で最も速いものでした。ユリシーズは、木星周回軌道へと移動し、重力を利用して軌道を変更していきました。

1992年2月には木星に到達し、スイングバイを行うことで、最終的に太陽の北極および南極を観測するための軌道へと導かれました。こうした過程を経て、ユリシーズは本格的な観測ミッションを開始しました。

観測活動

ユリシーズによる観測は、1994年から始まりました。この探査機は、太陽の北極圏や南極圏の状態を観察し、1996年には百武彗星のイオンの尾を通過しました。また、2000年から2001年には太陽の南極について予期せぬデータを収集し、その活動性を明らかにしました。

特に、南磁極の位置が明確に特定できない様子や高い活動性が観測されました。このことは、太陽の磁場に対する新たな理解をもたらしました。さらに、2004年には、マックノート・ハートレイ彗星の尾を観測し、太陽風の変化についてのデータも収集されました。

運用の終了

探査機の運用は一時的に延長され、2007年から2008年にかけて3度目の太陽極圏観測を行う計画もありました。しかし、搭載された原子力電池の出力が低下し、様々な機器の運用が制限される事態となりました。最終的に2009年6月30日、通信機器の主電源が切られ、ユリシーズの運用は終了しました。

ユリシーズは、その設計寿命の4倍を超える長期間にわたり科学データを収集し続け、多くの知見をもたらしました。これらの貴重なデータは、今後の太陽研究の基礎を築くものとなるでしょう。

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