ユーサー・ペンドラゴン

ユーサー・ペンドラゴンの伝説

ユーサー・ペンドラゴン（Uther Pendragon）は、古代ブリタニアの王であり、アーサー王の父として伝説に名を刻んでいます。彼はブリタニアの王コンスタンスの末弟であり、その存在は1100年以前に成立した詩『門番は何者か（Pa Gur yv y Porthaur）』にも登場します。このことから、彼はジェフリー・オブ・モンマスの創作よりも前から、アーサー王伝説において重要な役割を果たしていたと考えられていますが、具体的な情報は不明なままです。

歴史背景とサクソン人との戦い

ユーサーの生涯の背景には、ウェールズの赤竜の伝説が影響を与えています。彼の時代、ブリタニアではヴォーティガンという王が異民族サクソン人と共に暴政を敷いていました。その結果、ヴォーティガンに対抗すべく反乱軍が結成され、最終的には彼は討たれることとなります。ヴォーティガンが死去した後、彼の兄であるアンブロシウス・アウレリアヌスも命を落としました。

この混乱の最中、ユーサーは兄アウレリアヌスの死を知らされました。彼はサクソン人との戦闘に従事していた際、空に現れた明るい星の出現を目にします。その星は燃える火の竜に似ており、一つはガリアの方角へ、もう一つはアイリッシュ海へ向かっていたとされています。この不思議な現象を目の当たりにしたユーサーは、魔術師マーリンに意味を尋ねました。マーリンは、ユーサーの子が立派な王になる運命を示唆し、ブリテン民族がサクソンに勝つことが求められていると告げました。

ペンドラゴンの名の由来

サクソンとの戦いを通じてユーサーは勝利を収め、新たなブリテンの王に即位します。そして、星の出現を記念して二匹の黄金の竜を象徴とし、「ペンドラゴン」（Pendragon）という称号を持つことになりました。この称号の由来については諸説あり、ジェフリーによれば、マーリンが竜の頭を象った彗星を吉兆として捉え、ユーサーを王として迎えたことから名付けられたとされています。しかし、学者たちの中には「ペンドラゴン」が「戦士長」を意味する可能性が高いと指摘する意見もあります。加えて、一部は兄の名を継いだ称号ではないかとも語っています。

アーサー王の誕生と略奪婚

ユーサー・ペンドラゴンの物語は、彼が敵国の王であるゴルロイスの妃であるイグレインに恋をしたことで大きく動きます。彼は妃を手に入れるため、コーンウォールに攻め入ります。マーリンの魔力を借り、ユーサーはゴルロイスに姿を変えてイグレインとの交わりを果たします。この結果、本物のゴルロイスは戦死し、ユーサーはイグレインと結婚することができました。二人の間には子どもが生まれますが、その子はマーリンによって育てられることになります。この子どもこそが後にアーサー王となります。

この物語では、略奪婚が当時の常識であったことが強調され、勝者が妃を手に入れることが許される風潮が描かれています。アーサー王の伝説は、歴史の流れと人々の運命が交錯する複雑さを体現した物語と言えるでしょう。

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