ユースタス・テニソン＝ダインコート

サー・ユースタス・ヘンリー・ウィリアム・テニソン＝ダインコートの生涯と業績

サー・ユースタス・ヘンリー・ウィリアム・テニソン＝ダインコート（1868年4月1日 – 1951年2月1日）は、イギリスの優れた艦艇設計技師として知られ、「イギリス造船界の至宝」と称されました。彼は父親が治安判事であり、著名な詩人アルフレッド・テニソンの従兄弟としても知られています。彼のルーツには、政治家や海軍大将といった著名人が多く存在し、造船の道を選ぶのも必然であったと言えます。

ダインコートは、幼少期にイートン校を目指しましたが、スカラーシップ試験に落ちたため、チャーターハウス校へ進学します。卒業後、アームストロング・ホイットワース社に入社し、海軍技官としての道を歩み始めました。彼は私費でグリニッジ王立海軍大学に通い、艦艇設計技師としての技術を磨いていきました。

軍艦設計と功績

1904年には、オスマン帝国に赴き、防護巡洋艦「ハミディエ」の引き渡しを行いました。オスマン帝国からトルコ海軍艦艇の現況を取りまとめるよう求められ、報告書を提出したことにより、メディジエ勲章を受与されています。1912年には海軍造船局長に昇進し、戦艦設計に初めて携わりました。特にリヴェンジ級戦艦の主設計を行った際には、用兵側からの三連装砲塔の提案を拒否し、4基8門の連装砲塔という設計を選択しました。この決断は、リヴェンジ級が「Q.E.級戦艦の廉価版」というコンセプトに基づいていたためです。

第一次世界大戦が勃発すると、ダインコートは巡洋戦艦の設計に関与し、カレイジャス級やレナウン級巡洋戦艦の主設計を行いました。特に、フッドの設計は彼のキャリアの重要なマイルストーンとなりました。しかし、ユトランド沖海戦において巡洋戦艦の防御力の低さが露呈し、多くの艦船が沈没する事態を経て、フッドも改設計を余儀なくされることになります。

戦車の概念を生み出す

戦争の中でドイツ海軍の新型巡洋艦の脅威を受け、ダインコートは海軍省から新型戦艦の設計を命じられました。これを通じて、彼は戦車の概念に携わることになります。彼の設計により「タンク」という名の戦車が生まれ、地上戦において重要な兵器へと成長します。

軍縮とネルソン級戦艦

第一次世界大戦後、各国の海軍は軍備拡張を続けました。このため、1922年にはワシントン海軍軍縮会議が開かれ、イギリスも新たな戦艦の設計が求められました。ダインコートはネルソン級戦艦の主設計を行い、軽防御への反省を踏まえた重防御の艦船を設計しました。この艦船は、第二次世界大戦でも運用され、生き残ることになります。

晩年と評価

ダインコートは、海軍造船局長を退官した後もアームストロング・ホイットワース社で取締役を務め、1948年に引退するまで多岐にわたる設計を手掛けました。退官後は落ち着いた田園での余生を送り、1930年には準男爵位を授与されました。彼がもたらした業績は、イギリス海軍の艦艇設計において重要であり、戦艇思想や設計理念に影響を与えました。1951年にはロンドンで亡くなり、彼が手がけた艦船は今なおその存在を賛美されています。

ダインコートの業績は、その設計に関与した艦船においても顕著であり、特にリヴェンジ級戦艦、ネルソン級戦艦、巡洋戦艦フッドなどが挙げられます。彼の功績は、海軍技術の発展に大きく寄与し、今でも多くの海軍関係者や愛好者から敬愛されています。

もう一度検索