エンリコ・ベルリンゲル

エンリコ・ベルリングェル（1922年5月25日 - 1984年6月11日）は、イタリアの政治家であり、イタリア共産党（PCI）の書記長を務めました。彼は「ベルリンゲル」とも表記されます。

生い立ちと初期の活動

ベルリングェルは1922年、イタリアのサルデーニャ島サッサリで、貴族の家に生まれました。彼のいとこには、後にイタリア大統領となるフランチェスコ・コッシガがいます。1937年、ベニート・ムッソリーニのファシスト党が支配するイタリアで、反ファシスト運動に参加し、1943年にイタリア共産党に入党しました。

共産党での台頭

入党後、彼は共産党の有力者パルミーロ・トリアッティに紹介され、1944年にはサルデーニャ島の党組織を任されました。1946年にはローマの党本部に招かれ、党の中枢を担う一員となります。貴族出身でありながら、党内で頭角を現し、1957年には世界民主主義青年連盟の会長に就任するなど、要職を歴任しました。また、彼は頻繁にソビエト連邦のモスクワを訪問しました。

歴史的妥協政策

1972年、ベルリングェルはイタリア共産党の書記長に就任しました。書記長就任直後の1973年、彼はキリスト教民主主義との協力路線を打ち出し、「歴史的妥協政策」による連立政権の樹立を目指しました。この政策は、共産党の支持拡大につながりましたが、冷戦下のイタリアにおいて、カトリック教会やアメリカ合衆国などの反対により、実現には至りませんでした。

ユーロコミュニズム

1970年代から1980年代にかけて、ベルリングェルはプロレタリア独裁を放棄し、ソ連型社会主義と決別する「ユーロコミュニズム」路線を推進しました。この路線は、国内外で高い評価を受けました。また、1980年のソ連のアフガニスタン侵攻を公然と批判するなど、独自の外交を展開しました。さらに、スペイン共産党やフランス共産党など、西側諸国の共産党との連携を強化しました。これらの活動を通じて、イタリア共産党は国内での支持を拡大し、地方自治体や国会で議席を増やしました。

死とその後

1984年6月、ベルリングェルは遊説先のパドヴァで脳内出血を起こし、3日後に亡くなりました。彼の葬儀には、数十万人が参列し、党派を超えて多くの人々が彼の死を悼みました。彼の死後、イタリア共産党は急速に人気を失い、1991年には「左翼民主党」と党名を変更し、社会民主主義の潮流に加わることとなりました。

人物像と逸話

ベルリングェルは「ユーロコミュニズムの旗手」として、共産主義国だけでなく、民主主義国でも高い評価を受けました。その温和なルックスから女性を中心に高い人気を誇り、「プリンス」や「ドン・エンリコ」とも呼ばれました。また、マスコミのインタビューを避けることでも知られていました。

著書

ベルリングェルの著書には、『先進国革命と歴史的妥協』（大津真作訳、合同出版、1979年）があります。

関連人物

ズビグネフ・ブレジンスキーは、関連人物として挙げられます。

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