ユーロブルン・ER189

ユーロブルンER189/ER189B：F1界の悲劇的挑戦

1989年から1990年にかけて、イタリアのレーシングチーム、ユーロブルンはF1世界選手権に2台のフォーミュラ1マシン、ER189とER189Bを投入しました。しかし、これらのマシンは開発上の問題や財政難に苦しみ、F1の歴史にその名を刻むも、成功とは程遠い結果に終わりました。本記事では、ER189/ER189Bの開発背景、設計、レース戦績を詳細に解説し、その失敗作としての側面に迫ります。

開発の苦悩：財政難と開発遅延

ユーロブルンチームは、1988年シーズンに苦戦を強いられました。1989年シーズンに向けては、チームオーナーであるウォルター・ブルンがブラバムチームとの協力関係を模索しましたが、レギュレーション上実現不可能でした。そのため、ER189の開発はイギリスの専門家に委託され、ブルンテクニクス社が設立されました。チーフエンジニアにはジョージ・ライトンが就任。ER189は1989年1月に開発が開始されましたが、財政難により完成は夏までずれ込み、チームはシーズン前半を前年モデルの改良版であるER188Bで戦うことを余儀なくされました。

ER189：シンプルな設計と抱えた問題点

ジョージ・ライトンと元コローニのエンジニア、ロベルト・オーリによって設計されたER189は、シンプルな設計が特徴でした。しかし、前年モデルの問題点を解決できておらず、コンパクトなモノコックはドライバーであるクラウディオ・ランジェスをして「狭いコクピット」と評されるほどでした。リアカウルはドライバーの頭部後方にエアスクープを備え、サイドポッドは低く設計されていました。サスペンションはダブルウィッシュボーンにプッシュロッド式を採用していましたが、問題を抱えていたため、1989年の夏にはER188Bのものと交換されました。エンジンは前年型と同じジャッドCVを搭載。当初はコスワースDFRを使用する予定でしたが、ジャッドエンジンに変更されました。その性能はコスワースDFRに匹敵する600馬力を発揮しました。

1989年シーズンの苦戦

ER189は1989年ドイツグランプリでデビュー。7戦に参戦しましたが、グレガー・フォイテク、オスカー・ララウリといったドライバーたちは予選落ちを繰り返しました。2戦を走った後に不具合が見つかり、ブルンはER188Bのリアアクスルを移植するなどの改修を行いました。

ER189B：新車の夢と現実

1990年シーズン、ユーロブルンは新車ER190の開発を目指し、ネオテック製12気筒エンジンの搭載を計画していましたが、スポンサー資金の不足により頓挫しました。そのため、ER189を改良したER189Bを投入することになりました。ER189Bはジャッドエンジンを搭載し、フロントサスペンションをモノショック式に変更するなど、いくつかの改良が施されましたが、開発は予算不足により十分に行われることはありませんでした。ドライバーのモレノは開幕戦で13位に入賞しましたが、これがER189B唯一の完走となりました。

そして、幕切れへ

ER189/ER189Bは、2シーズンで22戦に参戦しましたが、決勝進出はわずか2回、完走は1回のみという結果に終わりました。開発の遅延、財政難、そしてマシンの性能不足という三重苦に見舞われ、チームは1990年シーズンをヨーロッパラウンドで終えることになりました。ER189/ER189Bは、F1における挑戦の軌跡として、そしてその困難さを象徴するマシンとして記憶されています。

参考文献

Didier Braillon: Grand Prix 1989. Editions ACLA 1989 (ohne ISBN).
Adriano Cimarosti: Das Jahrhundert des Rennsports. 1. Auflage, Stuttgart 1997, ISBN 3-613-01848-9.
David Hodges: Rennwagen von A-Z nach 1945. 1. Auflage, Stuttgart 1993.
David Hodges: A–Z of Grand Prix Cars 1906–2001, 2001 (Crowood Press), ISBN 1-86126-339-2.
Pierre Ménard: La Grande Encyclopédie de la Formule 1, 2. Auflage 2000 (St. Sulpice), ISBN 2-940125-45-7.
Nina und Hans Treml: Die Außenseiter. Schweizer im Internationalen Automobilrennsport 1950 bis heute. Verlag Baeschlin (Glarus) 2006, ISBN 978-3-85546-166-0.
* motorsport aktuell: wöchentlich erscheinende Schweizer Fachzeitschrift mit diversen Berichten und Notizen zum Thema Eurobrun in den Ausgaben der Jahrgänge 1988 bis 1990.

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