ヨハネス・ラウレス

ヨハネス・ラウレスの生涯と業績

ヨハネス・ラウレス（Johannes Laures, 1891年11月21日 - 1959年8月3日）は、ドイツ出身の歴史学者、経済学者、そしてイエズス会宣教師として、日本で幅広い分野に貢献しました。彼の生涯は、学問と信仰、そして異文化理解への深い探求に彩られています。

生い立ちと教育

1891年、ドイツのフレリンゲンで生まれたラウレスは、1906年にプリュムのギムナジウムに入学。1913年にはイエズス会に入会し、第一次世界大戦中は西部戦線で傷病兵の看護に当たりました。戦後、オランダで哲学と神学を修め、1923年に司祭に叙階されました。その後、アメリカに渡り、ウッドストック大学やコロンビア大学で哲学、神学、そして経済学を深く学び、コロンビア大学で博士号を取得。さらに、ベルリン大学ではヴェルナー・ゾンバルトに師事し、経済学研究を深める傍ら、日本語と日本文化を学びました。

日本での活動

1928年に来日したラウレスは、上智大学経済学部教授として教鞭を執り、経済学を講じました。しかし、後にキリシタン研究へと関心を移し、その分野で大きな足跡を残しました。上智大学内に北京ペイタン教会図書館やマニラ聖トマス大学図書館などの文献を集め、「キリシタン文庫」を設立。この文庫は、日本におけるキリスト教史研究の重要な拠点となりました。1942年には、上智大学文学部に史学科が創設されると、初代学科長に就任しました。

1957年には、長年の研究の集大成としてキリシタン文献目録『吉利支丹文庫』を完成させました。また、高山右近の列福運動にも尽力するなど、キリスト教史の発展に大きく貢献しました。1959年、腸癌のため入院先の聖母病院でその生涯を閉じました。

研究と著作

ラウレスの研究は、経済学からキリスト教史へと大きく展開しました。特にキリシタン研究では、歴史的な文献を丁寧に読み解き、史実に基づいた考察を重ねました。彼の著作は多岐にわたり、日本語で出版されたものだけでも多数あります。

主な著作として、『ロシアに於ける共産主義と其実相』(1932)、『カトリック的社会観』(1933)、『スコラ学派の貨幣論』(1937)、『きりしたん史入門』(1947)、『マルキシズム批判』(1947)、『織田信長とキリスト教』(1947)、『きりしたん大名』(1948)、『聖フランシスコ・サヴイエルの生涯』(1948)、『高山右近の生涯 日本初期基督教史』(1948)などがあります。これらの著作は、彼の深い学識と研究への情熱を物語っています。

思想と政治的立場

ラウレスは、共産主義に対して批判的な立場をとっていました。彼の著作や講演からも、その思想的な背景を垣間見ることができます。彼は、キリスト教的な価値観に基づいた社会観を提唱し、共産主義の思想とは相容れないものでした。

ラウレスの遺産

ヨハネス・ラウレスの生涯は、学問と信仰が結びついた、異文化理解への深い探求の軌跡でした。彼の研究は、日本のキリスト教史研究に大きな影響を与え、今なおその価値は失われていません。上智大学に設立された「キリシタン文庫」は、彼の業績を象徴するものであり、後世の研究者たちに貴重な資料を提供し続けています。

主な日本語著書リスト

『ロシアに於ける共産主義と其実相』カトリツク思想・科学研究所 1932
『カトリック的社会観』ヨハンネス・ラウレス 上智大学 1933
『スコラ学派の貨幣論』ヨハンネス・ラウレス 崎村茂樹訳 有斐閣 1937
『きりしたん史入門』松田毅一訳 エンデルレ書店 1947
『社会問題論考』ドン・ボスコ社 1947
『マルキシズム批判』中央出版社 1947
『織田信長とキリスト教』松田毅一訳 中央出版社 1947
『きりしたん大名』山辺二郎訳 弘文堂 アテネ文庫 1948
『聖フランシスコ・サヴイエルの生涯』エンデルレ書店 1948
『高山右近の生涯 日本初期基督教史』松田毅一訳 エンデルレ書店 1948
『近畿初期基督教史』ドンボスコ社 1948
『日本に来た聖ザビエル』翰林書院 1949
『高山右近の研究と史料』松田毅一訳 六興出版社 1949
『聖サビエルの灯』白鳥芳郎共著 翰林書院 ブルー・リボン・ブツクス 1949
『キリスト教的ヨーロッパ史』長寿吉編訳 中央出版社 1954
『キリスト教的ヨーロッパ史 附録』長寿吉編訳 中央出版社 1955
『日本カトリック教会史』中央出版社 1956
『キリストの教会の歴史』中央出版社 1958
『上智大学吉利支丹文庫』臨川書店 1985
『高山右近の生涯 日本初期キリスト教史』溝部脩監修,やなぎやけいこ現代語訳 聖母の騎士社 (聖母文庫)2016

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