ヨハネス8世 (ローマ教皇)

ヨハネス8世の生涯と業績

ヨハネス8世（Ioannes VIII, 820年頃 - 882年12月16日）は、9世紀のローマ教皇（在位：872年 - 882年）であり、教会慣用名ではヨハネと称されます。彼の時代は、教皇権が最も力を持った時期の一つとして知られています。

生い立ちと教皇就任

ヨハネス8世は、820年頃にローマで生まれました。長年、助祭長を務め、ニコラウス1世とハドリアヌス2世という二人の先代教皇から厚い信頼を得ていました。ハドリアヌス2世の死後、872年12月14日に52歳で教皇に選出されました。

ローマ防衛と教皇権の確立

教皇としてのヨハネス8世は、サラセン人（イスラム教徒）の侵入からローマを守るために、ローマ市民の協力を得て、防衛に成功しました。9世紀における有能な教皇の一人として評価されており、レオ9世が現れるまでのおよそ200年間、教皇権が最も輝いた時期を築きました。

ヨハネス8世は、サラセン人のイタリア侵入に対抗するため、ローマ皇帝ルートヴィヒ2世に支援を要請しました。ルートヴィヒ2世の死後、王権に対する教皇権の優位を保つため、西フランク王シャルル2世を皇帝に戴冠しました。シャルル2世が亡くなると、甥である東フランク王カールマンに援助を求めましたが実現せず、最終的にはカールマンの弟である東フランク王カール3世を皇帝に戴冠しました。しかし、これらの試みは彼の目的を十分に達成するには至りませんでした。

東方教会との関係

ヨハネス8世は、東方教会（正教会）との関係にも苦慮しました。869年から870年にかけて開催された第4コンスタンティノポリス公会議では、コンスタンティノープル総主教フォティオス1世の追放が決議され、先代教皇ハドリアヌス2世もこれに同意していました。しかし、ヨハネス8世は、879年から880年にかけて再び開催されたコンスタンティノポリス公会議でフォティオス1世の復帰を認め、正教会との関係を改善させました。この決定は、東方への影響力を弱めることになりました。

また、ヨハネス8世は、メトディオスのスラヴ人伝道を支援しましたが、ローマでは立場が不安定で、反対派の貴族を破門することもありました。その中には、後の教皇フォルモススも含まれていました。

暗殺とその後

国内の政治情勢が不安定な中、ヨハネス8世はローマ貴族の抗争に巻き込まれ、882年12月16日に暗殺されました。年代記によると、彼は毒を盛られた上で撲殺されたと伝えられており、犯人は教会内の人物である可能性が指摘されていますが、特定には至っていません。彼の死後、マリヌス1世が次の教皇に選出されました。暗殺の容疑をかけられていたフォルモススは無罪放免となりました。

ヨハネス8世は、その時代の混乱の中で教皇権を強化し、ローマの防衛に尽力しましたが、最後は悲劇的な結末を迎えました。彼の生涯は、中世初期の教皇権の盛衰を象徴する出来事として歴史に刻まれています。

参考文献

小林珍雄『法王庁』岩波書店（岩波新書）、1966年8月。
『岩波西洋人名辞典 増補版』岩波書店、1981年12月。
『キリスト教人名辞典』日本基督教団出版局、1986年。
P.G.マックスウェル・スチュアート著、月森左知・菅沼裕乃訳、高橋正男監修『ローマ教皇歴代誌』創元社、1999年。
マシュー・バンソン著、長崎恵子・長崎麻子訳『ローマ教皇事典』三交社、2000年。
学校法人 上智学院 新カトリック大事典編纂委員会編『新カトリック大事典 第4巻』研究社、2009年。

外部リンク

Find-A-Grave profile for John VIII（英語）
Opera Omnia by Migne Patrologia Latina with analytical indexes（英語）

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