ヨハン・ゲオルク・ピゼンデル

ヨハン・ゲオルク・ピゼンデル（1687年 - 1755年）は、ドイツ後期バロック音楽の作曲家であり、卓越したヴァイオリニストでした。彼は、当時ヨーロッパで最も優れたオーケストラの一つであったドレスデンのザクセン選帝侯宮廷楽団で長年コンツェルトマイスターを務め、「ドイツ最高のヴァイオリニスト」と評されました。

生涯

ピゼンデルはニュルンベルク近郊の村で生まれ、父は地元の教会音楽家でした。9歳でアンスバッハ宮廷礼拝堂の少年聖歌隊に入り、フランチェスコ・アントニオ・ピストッキやジュゼッペ・トレッリに音楽を師事しました。特にトレッリからはヴァイオリンの指導を受け、その才能を開花させました。声変わり後も宮廷楽団でヴァイオリンを続けましたが、1709年に更なる音楽の探求のためライプツィヒへ旅立ちました。

ライプツィヒへ向かう途中、ヴァイマルでヨハン・ゼバスティアン・バッハと出会い、ライプツィヒではゲオルク・フィリップ・テレマンに紹介されました。テレマンとは意気投合し、彼の創設した楽団「コレギウム・ムジクム」に加わり、精力的に活動しました。1711年にはダルムシュタット宮廷楽団から職の誘いを受けましたが、これを辞退しました。

その後、ドレスデンの宮廷楽団に入団し、1715年から1717年にかけてフランスとイタリアへ旅行しました。1716年にはヴェネツィアでアントニオ・ヴィヴァルディに師事し、ヴァイオリンの腕を磨きました。彼はヴィヴァルディの作品を多数筆写し、ドレスデンに持ち帰りました。中には、ヴィヴァルディからピゼンデルやザクセン選帝侯の宮廷楽団に献呈された作品も含まれていました。1718年にはウィーンへ旅行し、ヨハン・ダーフィト・ハイニヒェンの下で作曲を学びました。1728年にコンツェルトマイスターであったジャン・バティスト・ヴォリュミエの死後、その職を引き継ぎ、1730年に正式にザクセン選帝侯宮廷楽団のコンツェルトマイスターに就任し、生涯その地位に留まりました。

作品と影響

ピゼンデルの作品は現存こそ少ないものの、質が高いことで知られています。ヴァイオリン協奏曲10曲、コンチェルト・グロッソ4曲、ヴァイオリン・ソナタ2曲、トリオ・ソナタ、シンフォニアなどが残されています。

彼の作品数は少ないながらも、音楽界に与えた影響は大きいものでした。ピゼンデルは当時最も進歩的なドイツ人ヴァイオリニストの一人であり、アルビノーニ、ヴィヴァルディ、テレマンといった作曲家からヴァイオリン協奏曲を献呈されています。また、ヨハン・ゴットリープ・グラウンやフランツ・ベンダといった弟子を育てました。ヤン・ディスマス・ゼレンカとは親友であり、ゼレンカの死後にはその作品の出版に尽力しました。

ピゼンデルの伝記を執筆したヨハン・アダム・ヒラーによれば、彼は人格者であり、音楽家の名声に関わらず常に謙虚な態度で接し、困窮した学生への援助を惜しまなかったと伝えられています。生涯独身であったピゼンデルは、遺産を全て慈善事業に寄付しました。彼の最期の言葉は、生前の幸福を神に感謝するコラールの一節であったとされています。

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