トリオ・ソナタ

トリオ・ソナタ（Trio Sonata）

トリオ・ソナタは、17世紀末から18世紀初めにかけてヨーロッパで広く流行した器楽形式です。その名称は、二つの旋律楽器ともう一つの通奏低音によって、合計三つの独立した「声部」が構成されることに由来します。ただし、通奏低音はしばしば複数の奏者（例：チェロやヴィオラ・ダ・ガンバなどの低音楽器とチェンバロやオルガンなどの鍵盤楽器）によって演奏されるため、実際に演奏に携わる人数は必ずしも三名であるとは限りません。

楽器編成

旋律楽器としては、二挺のヴァイオリンが最も一般的でした。しかし、リコーダー、フルート、オーボエといった他の管楽器など、様々な組み合わせも数多く試みられました。バッハの有名な《音楽の捧げもの》に含まれるトリオ・ソナタでは、ヴァイオリンとフルートが用いられています。また、ヴィオラ・ダ・ガンバのような中低音域の楽器が使われた例も見られます。

ゲオルク・フィリップ・テレマンは膨大な数のトリオ・ソナタを残していますが、その中には、通常とは異なり旋律楽器に加えてチェンバロ（単なる通奏低音ではなく、独立したパートを演奏）と通奏低音という編成による作品も見られます。これは、バッハが晩年に好んだ、旋律楽器とチェンバロの右手・左手パートで三声部を構成する形式（事実上のトリオ・ソナタ）に近い考え方とも言えます。

特殊な例

ヨハン・ゼバスティアン・バッハは、オルガンのために六つのトリオ・ソナタ（BWV 525-530）を作曲しました。これらは、オルガン一台で三声部（右手、左手、ペダル）を演奏する独創的な形式であり、通常の編成とは大きく異なります。近年では、これらの作品をオリジナルのトリオ・ソナタ編成に編曲して演奏する試みもよく行われています。バッハにはこの他にも数曲のトリオ・ソナタ（BWV 1036-1039）がありますが、これらの中には真偽が疑われている作品も含まれています。例えば、BWV 1039（二本のフルートと通奏低音）は、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタBWV 1027と実質的に同一の楽曲です。バッハ自身は、旋律楽器とチェンバロの独立したパートによる三声部形式をより好んだ傾向があり、伝統的な通奏低音付きのトリオ・ソナタやソロ・ソナタは、むしろその息子たちが数多く作曲しています。

チェコの作曲家ヤン・ディスマス・ゼレンカの《ソナタ集》ZWV181は、オーボエ、ファゴット、通奏低音という珍しい編成で書かれており、オーボエが二本使われることで四重奏となる場合もあります。これらの作品は、ファゴットに極めて高度な演奏技術が要求されるなど、難曲として知られています。

主要な作曲家とその作品

トリオ・ソナタの歴史において、最も規範的な存在と見なされているのはアルカンジェロ・コレッリです。彼の作品1から作品4までの計48曲は、ほぼすべてが二挺のヴァイオリンと通奏低音のために書かれており、その完成されたスタイルは後世の多くの作曲家たちに大きな影響を与えました。アントニオ・ヴィヴァルディの《トリオ・ソナタ集》作品1も、コレッリの様式を忠実に受け継いでいます。

ディートリヒ・ブクステフーデの《6つのトリオ・ソナタ》作品1と《7つのトリオ・ソナタ》作品2は、作曲者の生前に出版された唯一の作品集です。ヨハン・パッヘルベルの《音楽の歓び》は、スコルダトゥーラ（調弦変更）を用いた二つのヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・ソナタ集として知られています。ドメニコ・ガロの12曲のトリオ・ソナタは、かつてジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージの作品とされていましたが、現在ではガロの作品であると考えられています。

この他にも、ヘンリー・パーセル、トマゾ・アルビノーニ、ジャック・オトテール、ゲオルク・フィリップ・テレマン、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、ジュゼッペ・タルティーニ、ジャン＝マリー・ルクレールなど、バロック期には数多くの作曲家がトリオ・ソナタを手がけました。古典派に入ると、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハやルイジ・ボッケリーニなどもこの形式の作品を残しています。

トリオ・ソナタは、バロック室内楽の中核をなすジャンルとして、当時の音楽語法や楽器編成の多様性を映し出す鏡とも言えるでしょう。

もう一度検索