ヨーゼフ・アイブラー

ヨーゼフ・レオポルト・アイブラー

ヨーゼフ・レオポルト・アイブラー（Joseph Leopold Eybler, 1765年2月8日生 - 1846年7月24日没）は、今日のオーストリア、シュヴェッヒャートに生まれ、ウィーンで没したウィーン古典派の作曲家です。生前は宮廷音楽家として重きをなしましたが、現代においては、自身の作品よりもヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとの親しい交流によって記憶されています。

生涯

アイブラーは音楽にゆかりのある家庭環境で育ちました。彼の父は学校教師を務める傍ら、合唱指揮者でもあり、作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドンとは遠縁ながら家族ぐるみの付き合いがありました。音楽の基礎を父から学んだ後、アイブラーはシュテファン大聖堂付属の男子校へ進学します。作曲をヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガーに師事し、その才能はモーツァルトに匹敵するとまで評価されました。ハイドンもまた、彼の才能を高く称賛したといわれています。

1792年、ウィーンのカルメル会系教会の楽長に就任。さらに1794年にはショッテンクロスターに移り、以後1824年までの30年間にわたりその地で活動しました。1824年から1833年には宮廷礼拝堂の楽長を務めるなど、ハプスブルク家の宮廷音楽家として重要な地位を占めました。女帝マリア・テレジアからの委嘱によって作曲された作品の一つに、彼の代表作とされる《レクィエム ハ短調》（1803年）があります。

モーツァルトとの親交

アイブラーは、ハイドンを通じてモーツァルトと知り合い、その指導を受ける機会を得ました。モーツァルトはアイブラーに深い信頼を寄せ、自身のオペラ《コシ・ファン・トゥッテ》のリハーサルを任せただけでなく、その後のいくつかの公演で指揮を依頼しました。

モーツァルトが1790年5月30日にアイブラーに宛てて送った証明書は、彼の音楽家としての評価を如実に示しています。モーツァルトはこの中で、アイブラーが著名なアルブレヒツベルガーの高弟であり、堅固な作曲技法を持つこと、室内楽と教会音楽の双方に通じていること、芸術歌曲の分野にも熟練していること、そして優れたオルガンやクラヴィーア奏者であることを認め、「これほど優れた新進作曲家は他にいない」とまで記しています。

モーツァルトとアイブラーの友情は彼の生涯を通じて続きました。アイブラー自身は、「私は幸運にも、何も隠すことなく、モーツァルトが亡くなるまで友人であり続けられた。彼の最期の辛い数日間、私が彼を寝床に抱えて寝かしつけ、看病した」と回想しています。

モーツァルトの死後、未亡人となったコンスタンツェは、夫が未完のまま遺した《レクィエム》の補筆完成をアイブラーに依頼しました。アイブラーはこれに応じようと試みましたが、結局その要求を果たすことはできませんでした。一説には、モーツァルトの音楽に対するあまりに大きな尊敬の念が、筆を進める上で障壁となったと考えられています。最終的に《レクィエム》を完成させたのは、フランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤーでした。

晩年

1833年、アイブラーはモーツァルトの《レクィエム》を指揮している最中に脳卒中に倒れました。この発作の後、彼は宮廷での職務を続けることが困難となりました。長年にわたるオーストリア宮廷での音楽家としての功績が認められ、1835年には貴族に列せられ、「ヨーゼフ・フォン・アイブラー」と名乗ることを許されました。

作品

アイブラーの作品はキリスト教音楽が中心であり、オラトリオ、ミサ曲、カンタータ、オッフェルトリウム、グラドゥアーレ、そしてレクィエムなど、多くの宗教作品を残しています。また、オペラを1曲作曲したほか、弦楽四重奏曲に代表される器楽曲や、リート（歌曲）も手掛けています。

代表的な作品として以下が挙げられます。

交響曲 第2番 ニ長調 （1790年頃）
クラリネット協奏曲 変ロ長調 （1798年）
死者のためのミサ曲 ハ短調 （1803年）
オラトリオ「四終」（Die Vier Letzte Dinge, 1810年）

アイブラーは、同時代の偉大な作曲家たちから認められ、宮廷においても重要な地位を占めた実力のある音楽家でした。特にモーツァルトとの人間的な交流は、彼の生涯を語る上で欠かせないエピソードとなっています。

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