ライリーアンドスコット・Mk III

ライリーアンドスコットMk III：スポーツプロトタイプの金字塔

ライリーアンドスコットMk IIIは、ボブ・ライリー、ビル・ライリー、マーク・スコットの3名によって開発されたスポーツプロトタイプカーです。1993年に設計が始まり、当初は1994年シーズンのIMSA GT選手権のワールドスポーツカー（WSC）クラス参戦を目指していました。しかし、完成は1995年となり、その後、北米やヨーロッパの様々なレースシリーズで活躍することになります。ル・マン24時間レースへの参戦も果たしており、その名を世界に知らしめました。

開発の歴史：幾多の改良を経て

Mk IIIの開発は、IMSAのWSC規定への適合を目指してスタートしました。当初のデザインは、後輪周りの空間に余裕を持たせた、先細りの後部サイドポッドが特徴でした。しかし、このデザインは注目を集めず、1994年シーズンへの投入は見送られました。

その後、ダイソン・レーシングとの協力関係を通して得られた経験を活かし、Mk IIIは再設計されました。シンプルでカスタマイズ性の高い設計に変更することで、製造コストを抑えつつ、高い競争力を実現しました。鋼管パイプフレームとカーボンファイバーパネルを組み合わせたシャーシ、様々な自然吸気V8エンジンに対応できるエンジンベイ、5速トランスミッションなどがMk IIIの特徴です。

空力性能の向上にも注力し、航空機設計者のジョン・ロンチの協力を得て、ロッキードの風洞を用いた綿密な空力試験を実施しました。最終的なデザインは、1993年の初期デザインを踏襲しつつ、改良されたエアロダイナミクスと冷却システムを備えたものとなりました。1995年から1998年にかけて、計17台のMk IIIが製造されました。

1999年には、新たなル・マン・プロトタイプ（LMP）規定への対応を目的としたMk IIIシリーズ2が製造され、さらに4台のシャーシが追加されました。いくつかのチームは自らの手でパフォーマンス向上のための改良を加え、Mk IIIの活躍は続きました。

Mk III C：さらなる進化

1999年、ライリーアンドスコットはゼネラルモーターズからキャデラックブランドのル・マン・プロトタイプ製造を受注しました。このキャデラック・ノーススター LMPの開発で培われた技術が、Mk IIIの進化版であるMk III Cにフィードバックされました。2001年にデビューしたMk III Cは、Mk IIIをベースとしながら、モノコック構造、ロールバー、ラジエーターレイアウトなどに改良が加えられています。

主な変更点は、コックピットとノーズ部分に集中していました。ノーススター LMPと同様のロールバー、改良されたノーズ形状、4灯式ヘッドライト、新しいダクトなど、空力性能と冷却効率の向上が図られています。トランスミッションも、5速から6速へと変更され、パドルシフトによる空気圧作動式ギアチェンジシステムのオプションも追加されました。

計5台のMk III Cが製造され、2005年までレースで使用されました。しかしながら、Mk III Cは大きな勝利を収めることはありませんでした。

レース戦績：輝かしい勝利の数々

Mk IIIは、1995年から2005年にかけて、IMSA GT選手権、米国ロードレーシングチャンピオンシップ、ロレックス・スポーツカー・シリーズ、アメリカン・ル・マン・シリーズなどで活躍しました。ダイソン・レーシングを始めとする数々のチームがMk III、Mk III Cを駆り、多くの勝利とタイトルを獲得しました。特にダイソン・レーシングは、Mk IIIで数々の優勝を飾り、シリーズチャンピオンにも輝きました。

1996年のデイトナ24時間レースとセブリング12時間レースでの優勝、1997年のデイトナ24時間レース連覇など、数々の記憶に残るレースがMk IIIの歴史に刻まれています。しかし、北米以外での活躍は限定的でした。ル・マン24時間レースへの参戦もありましたが、完走には至りませんでした。

バリエーション：多様なカスタマイズ

Mk IIIは、ベースシャーシをベースに、様々なチームが独自のカスタマイズを施しました。代表的な例として、ラファネリ・Mk III、R＆M SR01、ロビンソン・Mk III Cなどがあります。各チームは、空力性能、エンジン、トランスミッションなどを改良し、それぞれのチームのニーズに合わせたマシンを作り上げました。

まとめ

ライリーアンドスコットMk IIIは、優れたデザインと高い信頼性を持つスポーツプロトタイプカーとして、多くのレースで成功を収めました。その進化形であるMk III Cも、レースシーンに貢献しました。数多くの改良型やカスタマイズモデルが存在したことも、Mk IIIの人気を示す証と言えるでしょう。その活躍は、レース史に燦然と輝く、一つの金字塔として語り継がれていくことでしょう。

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