ライン・ドイツ・オペラ

ライン・ドイツ・オペラ・デュッセルドルフ・デュースブルク有限責任非営利法人（ドイツ語：Die Deutsche Oper am Rhein Düsseldorf Duisburg gGmbH、英語：German Opera on the Rhine）は、ドイツのデュッセルドルフ市とデュースブルク市が協力して運営する、ライン川沿いの主要なオペラ・バレエ団体です。両市の長年にわたる連携関係に基づき、オペラ、オペレッタ、ミュージカル、そしてバレエといった幅広い舞台芸術作品を上演しています。ドイツ国内では、自治体が一階層のみで共同出資する「水平混合公共事業」という形態をとる、特有かつ最大規模のオペラ団体の一つとして知られています。

この団体の中心的な活動拠点となるのは、デュッセルドルフ・オペラハウスとデュースブルク劇場の二つの主要な劇場です。また、演奏を担うのは、デュースブルク・フィルハーモニー管弦楽団とデュッセルドルフ交響楽団という、二つの付属オーケストラです。現在の総監督は2012年からクリストフ・マイヤー、音楽総監督は同じく2012年からアクセル・コバーが務めています。

歴史

ライン・ドイツ・オペラの設立は、1955年に近隣自治体間で結ばれたオペラ設立に関する契約に遡ります。そして、1956年9月28日に劇場協会として正式に発足し、1956/1957シーズンより活動を開始しました。初代総監督にはヘルマン・ユッフが就任しました。

協会の設立に至るまでには、両市の劇場がそれぞれ独自の歴史を歩んできました。デュッセルドルフでは、1873年に最初のオペラ劇場となる市立劇場の建設が始まり、1875年には未完成ながらも上演が開始されました。一方、デュースブルクでは1887年に音楽ホールが、1912年には新しい劇場が完成しました。当初はデュッセルドルフとの劇場協会を設立する動きもありましたが、第一次世界大戦後の混乱を経て、1919年にデュースブルク独自の団体が編成され、1921年にはデュッセルドルフとの提携を解消しました。その後、デュースブルク・オペラが設立され、一時期ボーフム市との劇場協定を結んで活動しました。この期間、サラディン・シュミットが両劇場の総監督を務めました。

デュースブルクとの最初の提携解消後、デュッセルドルフ市は市立劇場を「オペラハウス」と改称して独自の演劇事業を継続しました。1929年から1933年には、ヴァルター・ブルーノ・イルツ総監督の下でヤッシャ・ホーレンシュタインが音楽監督を務めました。

第二次世界大戦中、両市の劇場は甚大な被害を受けました。デュースブルク・オペラハウスは1942年に空襲でほぼ完全に破壊されましたが、代替会場を用いて公演は続けられました。デュッセルドルフ・オペラハウスも1943年に爆撃されましたが、急ぎ再建され、1944年5月1日に再開しました。しかし、1943年にはデュースブルク・オペラがプラハへの疎開を命じられ、1944年半ばまで公演を行いましたが、戦争の激化により同年の9月1日にドイツ全土の劇場が閉鎖され、デュースブルク・オペラは事実上終焉を迎えました。

終戦後、両劇場は復興への道を歩みます。デュッセルドルフでは1945年10月9日に公演が再開され、グスタフ・グリュントゲンスが劇場運営の全権を引き継ぎました。また、再建されたオペラハウスは、1946年10月2日にノルトライン＝ヴェストファーレン州議会の最初の議場としても使用されました。デュースブルク劇場は、1950年10月1日に再建後の幕を開けましたが、当初は客演公演を中心に行っていました。1952年には舞台が完成し、本格的な活動が可能となりました。

1951年には、デュッセルドルフ市がヴァルター・ブルーノ・イルツを招聘し、「デュッセルドルフ市立舞台」の総監督に据えました。これにより、グスタフ・グリュントゲンスは演劇部門に専念することとなりました。イルツは1956年に退任し、これがデュッセルドルフの音楽劇場とバレエ部門の再編成を促し、同年、ヘルマン・ユッフを総監督としてデュッセルドルフとデュースブルクの二都市間での協定が締結され、現在のライン・ドイツ・オペラが誕生しました。

改修を経て再オープンしたデュッセルドルフ・オペラハウスで1956年9月29日に『エレクトラ』が上演され、ライン・ドイツ・オペラの最初のシーズンが開幕しました。デュースブルクでも翌日『ファルスタッフ』が上演されました。1964/1965シーズンからはグリシャ・バーフスが20年以上にわたり総監督を務め、団体の基盤を築きました。その後、クルト・ホレス、トビアス・リヒターが総監督を引き継ぎました。1996/1997シーズンには、若い才能育成のためバレエ学校が開設されています。

2006年にはデュッセルドルフ・オペラハウスで大規模な改修工事が行われ、その間は仮設会場で運営が続けられました。改修は当初の計画を超過する費用と遅延に見舞われましたが、2007年8月18日に無事リオープンしました。この年、ライン・ドイツ・オペラは設立50周年を迎えました。

デュースブルク市では、財政的な課題からデュッセルドルフとの協定解消案が議論されましたが、市民からの大規模な請願活動もあり、2012年6月25日に市議会で協定維持が決定されました。ただし、団体は約100万ユーロの経費削減に取り組むこととなりました。

近年の出来事としては、2013年5月に、過激な演出が観客に強い心理的負担を与えたとしてワーグナーの『タンホイザー』公演が中止されるという異例の事態が発生しました。また、2015年3月24日には、ジャーマンウイングス9525便墜落事故により、所属歌手のオレグ・ブリヤク氏と客演歌手のマリア・ラドナー氏が犠牲となる悲劇に見舞われています。

ライン・ドイツ・オペラの劇場稽古場は、デュースブルクのヴァンハイム地区に設けられています。

主な関係者（設立後）

総監督：ヘルマン・ユッフ（初代）、グリシャ・バーフス、クルト・ホレス、トビアス・リヒター、クリストフ・マイヤー（2009年以降）
音楽総監督/首席指揮者：ギュンター・ヴィッヒ、若杉弘（1981-1986）、ハンス・ヴァラット、ゾルターン・ペシュコー、ジョン・フィオーレ（1999-2009）、アクセル・コバー（2009年以降）、ジョルダーノ・ベリンカンピ（デュイスブルクフィルハーモニー管弦楽団GMD、2012年以降）
主要なカペルマイスター：クリスティアン・ティーレマン（1985-1988）、マリー・ジャコー（2019-2022）
バレエ制作者（バレエ・アム・ライン）：エーリヒ・ヴァルター、パオロ・ボルトルッツィ、ハインツ・スポーリ、ヨウリ・ヴァモス、マルティン・シュレップファー、デミス・フォルピ（2020年以降）

日本との関係

ライン・ドイツ・オペラは日本とも繋がりがあります。指揮者の若杉弘氏が1981年から1986年まで音楽総監督を務めたほか、バリトン歌手の木村俊光氏（1970-1986、東洋人初の終身雇用歌手）やメゾソプラノ歌手の矢野恵子氏（1974-2005）が専属歌手として長期間活躍しました。バス歌手の妻屋秀和氏も出演経験があります。また、小林資典氏が2000年から2008年までコレペティートルとして所属していました。バレエ部門であるバレエ・アム・ラインには、2019年時点で加藤優子氏、中ノ目知章氏といった日本人ダンサーが所属しています。さらに、2011年11月には東京二期会との共同制作によるオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を上演するなど、交流が見られます。

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