ラウル1世 (ヴェルマンドワ伯)

ラウル1世・ド・ヴェルマンドワの生涯

ラウル1世・ド・ヴェルマンドワ（1085年頃または1094年頃 - 1152年10月13日/14日）は、カペー朝フランス王国の有力貴族であり、ヴェルマンドワ伯、アミアン伯、ヴァロワ伯を兼ねていました。彼は「勇敢伯」や「隻眼伯」とも呼ばれ、その波乱に満ちた生涯は、当時のフランス王国の政治情勢と深く結びついていました。

生い立ちと初期の活動

ラウル1世は、ヴェルマンドワ伯ユーグ1世とアデライード・ド・ヴェルマンドワの息子として生まれました。父ユーグ1世はフランス王アンリ1世の王子であり、ラウル1世は王家の血を引く人物でした。また、フランス王ルイ6世とは従兄弟の関係にありました。彼は、ノルマン反乱を起こしたフランドル伯ギヨーム・クリトンを支援するなど、初期から活発な政治活動を展開しました。

隻眼となる事件

1129年、リヴリー城包囲戦に参加していたラウル1世は、実弟であるショーモン＝アンヴェクサン卿アンリを殺害したクシー卿トマ・ド・マルルに復讐を試みました。この際、彼は相手に瀕死の重傷を負わせるも、自身も片目を失い、以降「隻眼伯」と呼ばれるようになりました。この事件は、彼の勇敢さと同時に、復讐心を象徴する出来事として語り継がれています。

王国における活躍

ルイ6世は、ラウル1世の能力を高く評価し、サン＝ドニ修道院長シュジェールと共に重用しました。1131年11月にはセネシャルに任命され、王の側近として活躍しました。彼はルイ6世とシャンパーニュ伯ティボー4世との戦いにおいて、国王を積極的に支援しました。1135年にはシュジェールの仲介により、ルイ6世とティボー4世の間で和睦が成立し、ラウル1世はティボー4世と共に、王太子ルイ（後のルイ7世）の後見人に任命されました。このことは、彼が王家から厚い信頼を得ていたことを示しています。

王室との関係と離婚

1137年、ルイ6世が崩御すると、ラウル1世は一時、王太后アデル・ド・サヴォワを支持しました。同年、ルイ7世とアリエノール・ダキテーヌの結婚式にも同行し、ボルドーまで赴きました。その後、ルイ7世の推薦により、王妃アリエノールの妹ペトロニーユ・ダキテーヌと結婚するために、最初の妻エレオノール・ド・シャンパーニュと離婚しました。この離婚は、近親婚であったという理由によるものでしたが、実際には政治的な思惑が働いていたと考えられます。この離婚は教会からの大きな反発を招き、教皇インノケンティウス2世はラウル1世とペトロニーユを破門しました。しかし、後に教皇エウゲニウス3世の時代になり、1148年に結婚が正式に認められました。

十字軍と摂政

1145年、ルイ7世が第2回十字軍に向けて出発すると、ラウル1世はシュジェールと共にフランスに留まり、摂政として国を治めました。このことは、彼が国王不在の間も国家を支える重要な役割を担っていたことを示しています。

結婚と子孫

ラウル1世は生涯で3度の結婚を経験しました。
最初の妻エレオノール・ド・シャンパーニュとの間には、長男ユーグ2世をもうけました。ユーグ2世は後に伯位を相続しましたが、僧籍に入り、その地位を弟ラウル2世に譲りました。
二番目の妻ペトロニーユ・ダキテーヌとの間には、エリザベート、ラウル2世、エレオノールの3人の子をもうけました。しかし、これらの子孫は皆、配偶者に恵まれず、ヴェルマンドワ家の直系は断絶しました。娘のエリザベートはフランドル伯フィリップ・ダルザスと結婚し、ラウル2世は若くしてハンセン病で亡くなりました。エレオノールはヴェルマンドワ家最後の女伯となりました。
三番目の妻はローレット・ダルザスで、子をもうけることはありませんでした。

死とその後

ラウル1世は1152年に亡くなりました。彼の死後、ヴェルマンドワ伯位は息子ユーグ2世、次いでラウル2世へと引き継がれましたが、最終的には娘のエレオノールへと渡り、ヴェルマンドワ家の直系は途絶えることとなりました。

映画への登場

ラウル1世は、映画『訪問者～革命～』に登場し、その波乱に満ちた人生が描かれています。

ラウル1世の生涯は、中世フランスの政治と社会を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。彼の活躍と苦悩は、歴史の中で忘れられることなく、後世に語り継がれていくでしょう。

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