ラタキア県

ラタキア県：地中海に輝く歴史と自然の宝

概要

シリア北西部、地中海の沿岸に位置するラタキア県は、同国を構成する14の県の1つです。面積は約2,300平方キロメートル、人口は約94万3千人（2007年推計）とされています。県都は地中海の主要港湾都市であるラタキア市です。

地理

ラタキア県は、東をイドリブ県とハマー県、北をトルコのハタイ県、南をタルトゥース県と接し、西側は地中海に面しています。穏やかな地中海性気候に恵まれ、海岸沿いの山地は緑に覆われ、冬には雪が積もることもあります。この美しい自然環境を活かし、ペルシャ湾岸諸国からの観光客を呼び込むリゾート地が点在しています。

歴史

ラタキア県は、古代から重要な交易拠点でした。古代都市ウガリット遺跡の発掘は、この地の長い歴史を示す証拠となっています。古代、そしてローマ帝国時代には穀物、綿花、果実の栽培が盛んに行われ、穀倉地帯として栄えました。


中世には、十字軍の城塞であるカラット・サラーフ・アッディーンが建造され、その歴史的遺産は現在も残っています。オスマン帝国時代には、ラタキア周辺はアラウィー派イスラム教徒が多く住む地域となりましたが、ラタキア市自体にはスンニ派イスラム教徒やキリスト教徒も数多く暮らしていました。オスマン帝国特有のミッレト制はアラウィー派には適用されませんでしたが、一定の自治が認められていました。


第一次世界大戦後、フランス委任統治領シリアが成立すると、シリアは4つの自治国に再編され、そのうちのアラウィー派国にはラタキア県とタルトゥース県の大部分が含まれました。このアラウィー派国では、アラウィー派住民による自治が認められていました。


1946年のシリア独立後も、自治権を求めるアラウィー派の反乱が何度か発生しましたが、政府によって鎮圧されました。


1970年には、ラタキア県出身のハーフィズ・アル＝アサドがクーデターを起こし、シリア全土の支配権を掌握しました。


2011年から続くシリア内戦では、ラタキア県はアサド政権支持者が多いと見なされており、一部地域で反政府勢力の活動が見られるものの、県の大部分はアサド政権の支配下にあります。

行政区分

ラタキア県は4つの郡に区分されています。


アル＝ハッファ郡
ジャブレ郡
ラタキア郡
カルダーハ郡


ラタキア県は、その豊かな歴史、美しい自然、そして複雑な政治的状況を背景に、シリアの中でも重要な役割を果たす地域と言えるでしょう。

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