ラフ民主同盟

ラフ民主同盟（LDU）の概略

ラフ民主同盟（ビルマ語: လားဟူဒီမိုကရက်တစ်အစည်းအရုံး、英語: Lahu Democratic Union、略称 LDU）は、ミャンマー連邦共和国に存在する政治及び武装組織です。この組織は、国内の様々な民族武装組織の一つとして活動しており、2018年2月13日には、ミャンマー政府との間で全国停戦合意（NCA）に署名しました。

LDUは、ビルマ統一民族連邦評議会（UNFC）という民族組織の連合体に加盟していた時期があり、またフェデラル連邦軍の設立にも関わりました。しかし、2021年ミャンマークーデターの発生以降、組織は内部対立により二つの派閥に分かれることになりました。一方の派閥を率いるジャ・ソロモン氏は、ミャンマー軍事政権との連携を深めていると報じられています。

歴史的背景

組織の源流

LDUに至るラフ族の組織的抵抗の歴史は、1960年代に遡ります。ラフ族の政治的・宗教的指導者であったパヤーのプージャンロン氏は、シャン民族主義者の反乱軍ヌームスクハーンによるラフ族村人への抑圧行為に反発し、アニミズム信仰を持つラフ族の人々をまとめ上げました。彼は「神の救世主」としてラフ族から崇拝され、チャイントン地域ではシャン族反乱軍とラフ族の間で衝突が頻繁に発生しました。この過程で、ミャンマー軍はラフ族を支援する立場をとりました。1964年には、クン・チャー・ヌが率いるシャン州軍の部隊が主要なラフ族の首長を拘束しましたが、後に部下や武器、アヘンを返還することで民族間の緊張は一時的に緩和されました。

プージャンロン氏は、ミャンマー軍の指揮下にある民兵組織「防衛隊（Ka Kwe Ye: KKY）」を率いていましたが、ネ・ウィン政権が進めたKKY解体政策を受けて、1972年末に反政府武装勢力へと転じました。1973年2月、彼はシャン州軍の協力を得て、ラフ民族統一党／ラフ州軍（Lahu National United Party/Lahu State Army: LNUP/LSA）を設立しました。LNUPは1976年に民族民主戦線（NDF）に加盟し、国民党軍やシャン州軍と連携して活動しました。1980年にプージャンロン氏が死去すると、仏教徒である彼の息子ジャウー氏が指導者の地位を継承しました。

組織の分裂と再編

ジャウー氏は中国人密売人の協力を得て、タイ・ミャンマー国境に位置するドイランをカジノ街に変貌させました。ここには、1977年にタイの刑務所を脱獄したラオスー氏が運営する賭博場やヘロイン精製所が存在しましたが、これらは1981年のミャンマー軍による奇襲攻撃で焼き払われました。

一方、1977年にプージャンロン氏がパンサンに派遣していたアビ中尉とその部隊は、ビルマ共産党兵士と共にタイ・ミャンマー国境地域に戻ると、ジャウー氏とは別に独自の活動拠点を設けました。この分裂は、結果的にクン・サ率いるシャン連合軍に有利に働きました。1982年1月にタイから追放されたクン・サの部隊は、同年8月にドイランを攻撃しました。兵力で劣るアビ中尉の部隊は多数の死傷者を出し、ジャウー氏とLNUP/LSAの残存部隊はモンナ村に撤退しました。その後、彼らはアビ氏に味方したラオスー氏を殺害しました。1984年1月、LNUP/LSAはミャンマー軍のモントン基地で政府に投降し、ミャンマー軍傘下の人民民兵隊に再編されました。

しかし、ジャウー氏は1985年8月に再び地下活動に入り、ラフ民族機構／軍（Lahu National Organisation/Army: LNO/A）を結成しました。この組織は1987年にNDFに加盟し、カレンニー民族進歩党などから軍事訓練を受けました。LNO/Aはタイ国境に近いモンナーに拠点を置きましたが、ミャンマー国内には実質的な部隊を持たなかったとされています。

一方のアビ中尉の部隊は、ビルマ共産党の支援を受けてシャン州南東部のラフ族村落で勢力を組織化しました。ミャンマー軍は、ビルマ共産党の拠点構築やラフ族難民の発生を防ぐため、チャイントン周辺や共産党基地近くのラフ族村落を破壊しました。アビ中尉は1985年にミャンマー軍情報部員とシャン連合軍の工作員によって殺害されたと言われています。彼の死後、部隊はテインミン氏に引き継がれ、その後ビルマ共産党の管理下に置かれました。1989年の反乱時には、共産党内のラフ族部隊がモン・タイ軍の陣地近くまで進出するなど、一定の軍事力を有していました。共産党がドイラン近くに拠点を置いたことは、ジャウー氏らのLNO幹部の反感を招きました。

1997年、LNOはラフ民族戦線（Lahu Democratic Front: LDF）と名称を変更しました。ジャウー氏は2000年にタイのチエンマイ市内で死去しました。

LDU結成以降と近年の分裂

2008年4月に開催されたラフ民族大会で、LDFは現在のラフ民主同盟（LDU）へと改称されました。UNFCの一員として、LDUはテインセイン政権下で和平プロセスに参加しましたが、この時点では武装組織とは見なされていませんでした。NLD政権に移行後も政府との協議を続け、2018年2月13日に全国停戦合意（NCA）に署名するに至りました。

2022年に入り、軍事政権からの和平交渉への参加を巡って、LDU内部で深刻な意見対立が発生しました。同年7月の中央委員会会議において、ジャ・ソロモン氏が書記長から新議長に任命され、彼率いる新体制は軍事政権との交渉を継続する姿勢を示しました。これに対し、元の議長であったジャハー氏は、同年7月8日にジャ・ソロモン氏とその支持者をLDUから追放したとする声明を発表しました。さらに、8月22日には、ジャ・ソロモン氏らが軍事政権と面会した行為はLDUを代表するものではないと重ねて表明しました。

2023年1月10日、ジャハー氏はラフ革命50周年記念式典において、ミャンマーが連邦制国家を樹立するまで、LDUは共通の目標を持つ他の民族革命組織や市民社会組織と協力して戦う決意を示しました。両派閥とも主にタイに拠点を置いているとされ、公式には軍隊を持たないとされています。しかしながら、ジャハー氏とジャクンサ氏の派閥は、タイ・ミャンマー国境地域で訓練や武装を行っているとの情報もあります。このように、LDUは現在、軍事政権との関係を巡る対立から深刻な分裂状態にあります。

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