ラメラーアーマー

ラメラーアーマーとは

ラメラーアーマー（Lamellar armour）は、中世のヨーロッパやアジアなどで見られた鎧の一種で、薄片鎧や薄金鎧とも呼ばれます。短冊状の小さな板（レーム、甲片、小札などと呼ばれる）に穴を開け、組紐や革紐などで連結して作られています。

日本では、奈良・平安時代の挂甲（裲襠式小札甲）や短甲（胴丸式小札甲）、平安時代後期以降の大鎧、戦国時代以降の当世具足などが、構造的に同じ小札甲（こざねよろい）に分類されます。

構造と特徴

ラメラーアーマーは、小さな板を連結して作られる点が特徴です。小札には、革、青銅、鉄（鋼鉄）、木などが用いられ、連結には紐革、絹、木綿、麻などの糸や金属製のリベットが使用されます。革製の小札は、煮固めたり漆塗りにすることで強度を高められています。

小札の連結方法には、縅し（おどし）技法、綴じ（とじ）技法、鋲留め（びょうとめ）技法などがあります。

縅し技法: 小札の穴に紐を通して繋げることで、装甲板に可動性を持たせる
綴じ・留め技法: 紐で括る、または鋲を打つことで、装甲板同士を完全に固定し、可動性を持たせない

縅し技法を用いたものは、細長い小札と縅毛を組み合わせることで、柔軟性と強度を両立させています。

ラメラーアーマーは、スケイルアーマーと似ていますが、スケイルアーマーが布状の下地に小片を取り付けるのに対し、ラメラーアーマーは小片同士を直接連結する点が異なります。

歴史

ラメラーアーマーは、紀元前900年～600年頃の中近東アッシリアで発達したと考えられています。中国では、戦国時代の遺跡から鉄製の甲片が出土しています。

鎖帷子や小片鎧に比べ、製造には高度な技術が必要でしたが、より堅牢で防護性能に優れていたため、量産化が進むと広く使用されるようになりました。

スカンディナヴィア半島やロシアでは、構造が簡素でメンテナンスが容易な革製のラメラーアーマーが普及しました。また、モンゴル、トルコ、サカなどのステップ地帯の騎馬民族も、金属製のラメラーアーマーを使用しました。

中国で発達した金属製のラメラーアーマーは、北アジア、朝鮮半島、日本にも伝わりました。日本では、古墳時代後期から小札甲が甲冑の主体となり、平安時代以降の大鎧や胴丸へと発展していきました。

日本の小札甲

日本の小札甲は、古墳時代後期から武士の鎧として使用されました。宮崎隆旨の研究によれば、平安時代以降の大鎧は奈良時代の挂甲（裲襠式小札甲）を、胴丸は短甲（胴丸式小札甲）を元に発展したと考えられています。

まとめ

ラメラーアーマーは、その構造の簡素さ、メンテナンスの容易さ、そして高い防御力から、世界各地で広く使用された鎧の一種です。日本の甲冑にも大きな影響を与え、その技術は現代にも受け継がれています。

参考資料

劉, 永華『中国古代甲冑図鑑』アスペクト、1998年
オーデン, グラント『西洋騎士道事典』原書房、2002年
阪口, 英毅「武具の種類と変遷」『季刊考古学』第76巻、雄山閣、2001年
古代武器研究会『古代武器研究』第7巻、古代武器研究会、2006年
宮崎, 隆旨「令制下の史料からみた短甲と挂甲の構造」『古代武器研究』第7巻、古代武器研究会、2006年

関連項目

小札甲
* 小札かたびら

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