騎馬民族

騎馬民族とは

騎馬民族とは、馬を主要な移動手段として、また戦闘や生産活動に利用する民族の総称です。本来はユーラシア大陸中央部のステップ地帯に暮らす遊牧民を指しましたが、狩猟民や農耕民の中にも騎馬技術を取り入れた民族が存在します。

騎馬民族の多様性

騎馬民族は、大きく分けて遊牧民系と非遊牧民系に分類できます。

遊牧民系騎馬民族: ユーラシア内陸部の乾燥地帯を中心に活動しました。スキタイ、匈奴、モンゴルなどが代表例です。彼らは家畜を追い、季節ごとに移動しながら生活し、騎馬技術を生活の基盤としていました。
非遊牧民系騎馬民族: 乾燥地帯と森林、または農耕地帯が隣接する地域に居住し、牧畜、農耕、狩猟を組み合わせて生活していました。烏桓、鮮卑、満洲族などが挙げられます。彼らは遊牧民から騎馬技術を学び、自らの文化に取り入れました。

騎馬民族の歴史

馬は当初、食料として利用されていましたが、紀元前4千年紀に家畜化され、紀元前5500年頃には乗馬の風習が始まったと考えられています。馬は運搬や牽引にも利用され、その機動力は戦闘力を飛躍的に向上させました。騎馬民族の成立には、遊牧民が大きな役割を果たしました。彼らは騎乗技術を遊牧生活に応用し、機動力を活かして経済圏を拡大しました。

スキタイは、紀元前8世紀末に南ロシアのステップ地帯に現れた最初の遊牧騎馬民族国家です。彼らは優れた騎馬技術と武器を持ち、アケメネス朝ペルシアやマケドニアのアレクサンドロス大王とも戦いました。スキタイ以降、中央ユーラシアの遊牧民は次々と騎馬民族化し、その影響は東西に広がりました。

騎馬文化の影響

騎馬文化は、人々の生活様式や文化に大きな影響を与えました。

ズボン: 騎馬生活に適した衣服として、ユーラシア大陸の乾燥地帯で生まれました。ズボンは、騎乗時の摩擦や寒さから身を守り、動きやすさを提供しました。その影響はヨーロッパにも及び、現代のズボンの原型となりました。
競馬: 騎馬民族にとって、競馬は重要なスポーツであり、祭りの際に盛んに行われました。競馬は、馬の速さや騎手の技術を競うだけでなく、死者の供養や共同体の結束を深める意味合いも持っていました。競馬の文化はユーラシア各地に広まり、様々な民俗行事として発展しました。

騎馬民族に関連する学説

騎馬民族征服王朝説: 江上波夫が唱えた説で、東北ユーラシア系の騎馬民族が日本列島に侵入し、大和朝廷を樹立したという仮説です。この説は、日本の古代史における騎馬民族の影響を強調するもので、学界で大きな議論を呼びました。

騎馬民族の例

インド・ヨーロッパ語族
スキタイ
テュルク系民族
モンゴル系民族
マジャール人

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