ランデブー・ピッチ・マニューバ

ランデブー・ピッチ・マニューバ (RPM)とは

ランデブー・ピッチ・マニューバ（Rendezvous Pitch Maneuver : RPM）は、スペースシャトルが国際宇宙ステーション（ISS）へドッキングする前に実施される特殊な機動です。

概要

RPMの目的は、スペースシャトルの耐熱シールドの状態を詳細に確認することです。ISSに接近したシャトルは、通常約180mの距離で、機体下面の耐熱シールドをISS側に向けて360度回転します。この回転は、宙返りというよりは、縦方向への緩やかなスピンに近い動きです。

ISSに搭乗している宇宙飛行士は、このRPMの間に、ビデオカメラや高性能デジタルカメラを用いて、シャトルの耐熱シールドを撮影します。特に、打ち上げ時や上昇時に熱防護材が損傷していないかを入念にチェックします。400mmや800mmといった望遠レンズを使用し、細部まで鮮明な画像を記録します。

ISSにごく近い距離で実施されますが、シャトルから常にISSが見えているわけではありません。そのため、RPMの実行には、衝突を回避するための高度な操縦技術が要求されます。

RPM開発の背景

RPMは、NASAの技術者であるスティーブ・ウォーカー、マーク・シュロック、ジェシカ・ロプレスティによって、コロンビア号の事故後に開発されました。

2003年に発生したコロンビア号の事故は、スペースシャトルの安全管理における重大な転換点となりました。コロンビア号は、打ち上げ時に外部燃料タンクから剥離した断熱材が熱防護システムに衝突し、損傷を受けました。大気圏再突入の際、損傷箇所が深刻な弱点となり、機体は空中分解しました。この悲劇的な事故以降、NASAは熱防護システムの完全性を最重要課題と位置づけました。

事故後の初の飛行ミッションであるSTS-114では、センサー付き検査用延長ブームによる船体検査と並行して、初めてRPMが実施されました。

RPMの結果とその後

RPMで収集されたデータは、シャトルが安全に地球に帰還できるかを判断するための重要な情報源となります。もし、耐熱シールドに重大な損傷が見つかった場合、NASAは以下のいずれかの対応を検討します。

ISSに滞在し、救助ミッションを待つ。
船外活動を行い、熱防護システムの修理を試みる。

RPM実施ミッションの例

STS-114 (2005年7月28日)
STS-121 (2006年7月6日)
STS-115 (2006年9月11日)
STS-116 (2006年12月11日)

STS-114以降、RPMは全てのISSミッションで実施されています。

関連項目

マニューバ
軌道マヌーバ
* ランデブー (宇宙開発)

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