ランプ議会 (イングランド内戦)

ランプ議会：イングランド内戦と王政復古を繋いだ動乱の議会

ランプ議会（Rump Parliament）は、17世紀半ばのイングランドで、清教徒革命期に存在した政治組織です。その名は、動物の尻肉を意味する「rump」に由来し、長期議会から残った少数の議員によって構成されたことから名付けられました。 本稿では、ランプ議会の成立から崩壊、そしてその後の再召集と王政復古に至るまでの経緯を詳細に解説します。

混乱の始まり：プライドのパージと議会の変容

第二次イングランド内戦後、議会派内部では国王チャールズ1世の処遇や軍の解体問題などを巡り、長老派と独立派が対立していました。この対立は軍部にも波及し、平等派と独立派の対立が激化していました。こうした政情不安の中、長老派がチャールズ1世との和睦交渉を進めたことに反発したニューモデル軍が1648年12月6日、クーデター（プライドのパージ）を実行。長老派議員を大量に排除し、残った独立派議員60名弱で構成されたのが、ランプ議会です。この議会は、正当性を欠き、軍の強い影響下にある脆弱な政治組織でした。

王政の廃止と共和国の誕生

急進的な勢力が台頭したランプ議会は、1649年1月、チャールズ1世の裁判を行い、処刑に踏み切りました。続いて上院を廃止し、王政を廃止、イングランド共和国を樹立しました。しかし、議会による統治は国民の支持を得られず、チャールズ1世の処刑は国民に同情を呼び、王党派の反乱を招きました。スコットランドやアイルランドも反旗を翻し、共和国は国内外から激しい抵抗にさらされました。パージで一時的に協力関係にあった独立派と平等派も離反し、ランプ議会は内外からの敵に囲まれた厳しい状況に置かれました。

クロムウェルの台頭と議会の終焉

オリバー・クロムウェル率いるニューモデル軍は、アイルランド遠征やスコットランド遠征で王党派を鎮圧し、共和国の安定に貢献しました。しかし、ランプ議会は権力集中と腐敗により評判が悪化し、財政難や軍との対立も深刻化しました。クロムウェルは、議会の無能さを嘆き、1653年4月20日、軍を率いて議会を解散させました。こうして、13年間続いた長期議会とランプ議会は終焉を迎えました。クロムウェルは護国卿となり、共和国の支配者となりました。

ランプ議会の復活と王政復古

クロムウェルの死後、その息子リチャード・クロムウェルが護国卿を継いだものの、軍の支持がなく、短期間で退任しました。この混乱に乗じ、1659年5月7日、軍と共和派によりランプ議会が再び召集されました。しかし、軍と議会の対立は再び表面化し、混乱は収まりませんでした。 ジョージ・マンク将軍がスコットランド駐屯軍を率いて南下し、ランプ議会を支持を表明。軍事的圧力により、議会は長期議会を復活させ、王政復古への道筋が開かれました。最終的には、チャールズ2世が王位に復位し、王政復古が実現したのです。

まとめ

ランプ議会は、イングランド内戦期の激動の中で生まれた短命な議会でした。その存在は、王政から共和制への移行、そして王政復古へと続く、イングランドの歴史における重要な転換期を示しています。プライドのパージによって誕生したこの議会は、その正当性に疑問符がつきまとい、軍に依存せざるを得ない脆弱な立場にありました。 しかし、その短い期間において、チャールズ1世の処刑という歴史的事件に関与し、イングランドの政治体制を大きく変革する役割を果たしました。その後、再召集された後も混乱は続き、最終的には王政復古へとつながる重要な役割を演じ終えました。ランプ議会は、イングランド革命史において決して無視できない存在と言えるでしょう。

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