ラ・フィユ・マル・ガルデ

ラ・フィユ・マル・ガルデ（La Fille mal gardée）

『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、フランス語で「下手に見張られた娘」という意味を持つバレエ作品です。1789年に初演され、当初は『藁のバレエ、または善と悪は紙一重』という題名でした。現在では、『リーズの結婚』という邦題でも知られています。

概要

この作品は、現存する古典バレエとしては「ジゼル」と並び、最も古い作品の一つとされています。初演時の振付は失われていますが、現在ではフレデリック・アシュトン版が最も有名で、世界中で上演されています。アシュトン版は、ジョン・ランチベリーがフェルディナン・エロルドの音楽を編曲した楽譜を使用しています。日本でも牧阿佐美バレヱ団がレパートリーとしています。

その他に、ルートヴィッヒ・ヘルテル作曲、マリウス・プティパ、レフ・イワノフ改訂振付によるロシア版も存在します。

1789年7月1日にボルドーで初演された後、ロンドン、ベネツィア、ミラノ、マルセイユなどで上演され、1800年にはモスクワで初演されました。1808年にはシャルル・ディドロによって改訂され、サンクトペテルブルクで上演されました。1828年にはフェルディナン・エロルドが新しい音楽を作曲しましたが、楽譜は紛失し、1864年にペーター・ルートヴィヒ・ヘルテルが再び作曲しました。

アシュトン版

ここでは、上演数の多いアシュトン版について解説します。アシュトン版は全2幕構成で、ヒロインの母親を男性が演じるという特徴があります。「木靴の踊り」や「鶏の踊り」など、コミカルな要素が散りばめられています。

登場人物

リーズ： 農家の一人娘。恋多き女性。
コーラス（コラ）： 貧しいけれど魅力的な農夫で、リーズの恋人。
シモーヌ： リーズの母親。未亡人で、リーズとアランの結婚を望んでいます。男性が演じるのが通例です。
アラン： 裕福な農場主トーマスの息子。純真な性格ですが、少し変わった行動をします。
トーマス： アランの父親で、裕福な農場を所有しています。リーズを息子と結婚させようとします。

あらすじ

舞台はフランスの田舎。季節は初秋。

第一幕：

農家の朝。リーズは恋人のコーラスを想い、愛の証であるリボンを木の枝にかけます。コーラスが現れ、二人は愛を確かめ合いますが、母親のシモーヌに見つかってしまいます。シモーヌは、リーズを裕福な農場主の息子アランと結婚させようと考えているのです。アラン親子がやってきますが、アランは少し間の抜けた行動ばかりで、周囲を困惑させます。一行はトーマスの馬車で収穫に出かけます。

畑では農夫たちが楽しそうに収穫をしています。リーズは母親の目を盗んでコーラスと愛を語り合います。シモーヌは二人の密会を邪魔しようとしますが、農夫たちにごまかされ、得意の「木靴の踊り」を披露します。そこに嵐がやってきて、アランが飛ばされてしまいます。

第二幕：

シモーヌの家。雨の中、シモーヌとリーズは家に駆け込みます。リーズは再びコーラスに会おうとしますが、シモーヌはそれを阻止しようとします。シモーヌはリーズを部屋に閉じ込め、糸巻きをさせます。やがてシモーヌが眠ってしまうと、リーズは窓からコーラスと愛を語り合います。シモーヌが目を覚ました時、農夫たちが収穫した麦束を運び込んできます。シモーヌはリーズとアランの結婚を強引に進めるため、リーズを家に閉じ込めたまま、アラン親子と公証人を呼びに行きます。

閉じ込められたリーズは、コーラスへの愛と将来について空想します。実はコーラスは麦束の中に隠れており、リーズの言葉を聞いて飛び出してきます。二人は愛を誓い合いますが、シモーヌが戻ってきたため、リーズはコーラスを自分の部屋に隠します。シモーヌはリーズの態度を不審に思い、リーズを部屋に閉じ込めて結婚式の準備を始めます。アラン親子と公証人がやってきてリーズの部屋を開けると、そこには花嫁衣装を着たリーズとコーラスがいました。騒然となる一同でしたが、公証人はシモーヌを諭し、リーズとコーラスの結婚を認めるべきだと説得します。ついにシモーヌは折れて、コーラスを婿として認めます。トーマスは激怒して結婚契約書を破り捨て、アランを連れて帰ってしまいます。

リーズとコーラスは祝福され、結婚します。皆は喜びながら家を後にします。

無人になったシモーヌの家に、アランが忍び込んできます。彼はなくしたと思っていた赤い傘を見つけ、満足して帰って行きます。

参考文献

Chapman, John, "La Fille mal gardée", International Dictionary of Ballet, vol.1, pp.493-494, ISBN 1-55862-157-1
小倉重夫編『バレエ音楽百科』（音楽之友社、1997年）
ジョン・ランチベリー『音楽ノート』（牧阿佐美バレヱ団2009年公演時のプログラムより）

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