ラーマ7世

ラーマ7世、本名プラチャーティポックは、1893年にラーマ5世の子として生まれました。彼は、イギリスのイートン・カレッジやウーリッジ士官学校、フランス陸軍大学校で学び、国際的な視野を養いました。1918年には、ラーマ4世の孫であるラムパイパンニー王女と結婚しました。

軍人としての短いキャリアを経て、ラーマ7世は兄ラーマ6世の急逝により、予期せず王位を継承することになりました。彼は、先王の負債を引き継ぎ、世界恐慌の影響で悪化した国家財政の立て直しに尽力しました。王室費の大幅削減や官僚の人事整理といった「合理化」政策は、官僚、特にフランス留学組の反発を招き、人民党結成の遠因となりました。

1931年、ラーマ7世は眼病手術のためにアメリカを訪れた際、議会制導入を検討するようになりました。憲法草案を作成しましたが、王族の反対により発表を断念。これに不満を抱いた人民党が、1932年に立憲革命を起こし、ラーマ7世は憲法を発布せざるを得なくなりました。これにより、タイは絶対君主制から立憲君主制へと移行しました。

しかし、新政府が国王の承認を権力のよりどころとしたため、ラーマ7世は翌年、目の病気を理由にイギリスへ亡命しました。新政府は、国王の承認を得るためにイギリスまで赴く必要があり、事務処理が滞ったため、ラーマ7世に帰国を要請しましたが、彼はこれを拒否。1935年には、民主制への移行が遅々として進まないパホン政権に抗議するため、自ら退位しました。その後、イギリスで不遇な生活を送り、1941年に心臓発作により亡くなりました。

ラーマ7世は、生前に二度日本を訪れています。1924年にはラムパイパンニー妃とともに来日し、高徳院で兄ラーマ6世が植樹した黒松を鑑賞しました。1931年には眼病治療のためにアメリカへ向かう途中、日本に立ち寄り、天皇皇后との会見や歌舞伎鑑賞など、公式な訪問を行いました。また、帰国時にも日本に立ち寄り、日暹寺を参拝しました。

ラーマ7世の生涯は、絶対君主制から立憲君主制への移行という、タイの歴史における大きな転換期を象徴しています。彼の政治的な苦悩と、自ら退位するという決断は、タイ国民に大きな影響を与えました。

王族称号は、時代によって変化しています。1893年から1906年はプラチャーティポック・サックディデート王子殿下、1906年から1925年はスコータイ公プラチャーティポック王子殿下、1925年から1935年はマハープラチャーティポック国王陛下、そして1935年から1941年はスコータイ公プラチャーティポック王子殿下です。

ラーマ7世の足跡は、タイの近代史において重要な意味を持ち続けています。

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