リカルド・オドノポソフ

リカルド・オドノポソフは、20世紀を代表するヴァイオリニストの一人です。1914年、アルゼンチンのブエノスアイレスで、ユダヤ系ロシア移民の子として生を受けました。幼い頃から音楽の才能を発揮し、13歳でベルリン音楽大学に入学。カール・フレッシュにヴァイオリンを、パウル・ヒンデミットに作曲を師事しました。

1931年には、エーリヒ・クライバー指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との共演でソリストデビューを果たし、その才能を広く知らしめました。翌1932年にはウィーンのコンクールで第1位を獲得。1937年のウジェーヌ・イザイ・コンクールでは、ダヴィッド・オイストラフと優勝を争い、第2位入賞という輝かしい成績を収めました。このコンクールでは、オイストラフがソ連政府のバックアップを受け、万全の準備で臨んだのに対し、オドノポソフは当時ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務めており、コンクール前日までウィーンでの演奏会を終え、夜行列車でブリュッセルへ向かうという状況下で、見事な演奏を披露しました。

1934年1月1日、ウィーン国立歌劇場総監督のクレメンス・クラウスにその才能を見出され、ウィーン国立歌劇場管弦楽団およびウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに抜擢されました。試用期間を経て、1935年9月1日に正式にウィーン・フィルのコンサートマスターに就任。しかし、ナチスによるオーストリア併合の影響を受け、1938年9月1日に歌劇場とウィーン・フィルを退団し、ウィーンを去ることとなりました。

1944年には、カーネギーホールでの演奏会でアメリカデビューを飾り、アメリカではアルトゥーロ・トスカニーニ、ブルーノ・ワルター、エルネスト・アンセルメ、レナード・バーンスタイン、フリッツ・ブッシュ、アンドレ・クリュイタンスなど、名だたる指揮者たちと共演しました。

1956年にはウィーンに戻り、翌1957年にはウィーン音楽アカデミーの教授に就任。後進の育成に尽力し、パウル・グッゲンベルガー（第1ヴァイオリン奏者）、オルトヴィン・オットマイヤー（第2ヴァイオリン奏者）、エドヴァルト・クドラク（ヴィオラ奏者）など、後にウィーン・フィルのメンバーとなる多くの才能ある音楽家を育てました。1973年にウィーン音楽アカデミー教授を退任後、1975年から1984年までチューリヒ音楽院でヴァイオリンの教授を務めました。

1994年2月24日に80歳の誕生日を迎え、翌25日にはウィーン楽友協会大ホールでの記念式典において、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団から名誉リングが贈られました。2004年、ウィーンでその生涯を閉じました。

オドノポソフは、卓越した演奏技術と豊かな音楽性で聴衆を魅了し、20世紀を代表するヴァイオリニストとして、その名は音楽史に刻まれています。

参考文献
* ヨーアヒム・ハルトナック「二十世紀の名ヴァイオリニスト」（白水社、松本道介訳）

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