リジェ・JS33

リジェJS33：1980年代後半のリジェを象徴するF1マシン

リジェJS33は、1989年と1990年のF1世界選手権においてリジェチームが使用したフォーミュラ1カーです。ミッシェル・ポイジョン、クロード・ギャロバン、そしてリカルド・ディビラの3名が設計に携わりました。前モデルであるJS31が2分割燃料タンクという実験的な設計を採用したものの失敗に終わり、ノーポイントという結果に終わったことから、JS33の設計においてはシンプルさと信頼性を重視した保守的なアプローチが採られました。

JS33の設計と特徴

JS33は、外観がマーチ・881と類似しており、マーチから購入したギアボックスを採用するなど、コストパフォーマンスにも配慮した設計となっています。JS31で採用されていたプルロッド式サスペンションは、JS33ではプッシュロッド式に変更され、パワーステアリングも廃止されました。エンジンは、ジャッドV8エンジンとの契約を1年で終了し、ラングフォード＆ペックによってチューンされたコスワースDFRエンジンへと変更されました。また、JS31で問題となった燃料タンクは、ドライバーの背後に配置される従来通りのシングルタンクに変更されています。これらの設計変更により、JS33はJS31よりも信頼性が高く、扱いやすいマシンとなりました。ブラジル人エンジニア、リカルド・ディビラによる最終的な仕上げが、マシンの完成度を高める上で重要な役割を果たしました。

1989年シーズン

1989年シーズンのドライバーは、ベテランのルネ・アルヌーと、国際F3000ランキング2位の実績を持つルーキー、オリビエ・グルイヤールのフランス人コンビでした。グルイヤールは予選でアルヌーを上回る速さを見せ、その才能の高さが注目されました。このシーズン、アルヌーはカナダGPで5位入賞を果たし、2ポイントを獲得。リジェにとって2年ぶりのポイント獲得となりました。続くフランスGPではグルイヤールが6位入賞。両ドライバーがポイントを獲得したのは1986年以来のことでした。このシーズン、リジェはコンストラクターズランキングで13位という結果を残しました。しかし、予選落ちが11回と多く、アルヌーがモナコGPでアラン・プロストをブロックした行動などは物議を醸しました。アルヌーはこのシーズンを最後にF1を引退することとなりますが、最終戦オーストラリアGPではリジェの両車が接触するというアクシデントに見舞われ、悔いの残る幕切れとなりました。

1990年シーズン

1990年シーズンは、改良型のJS33Bからスタートしました。マーチ製のギアボックスを廃止し、Xtrac製のトランスミッションユニットを採用。フロントサスペンションも見直され、軽量化も図られました。ドライバーは一新され、前年ラルースで活躍したフィリップ・アリオーと、フェラーリからの移籍組であるニコラ・ラリーニが起用されました。JS33Bは前年モデルよりも信頼性が高まりましたが、コスワースDFRエンジンのパワー不足が足を引っ張り、上位進出は困難でした。モナコGPではアリオーが好走するも、トランスミッショントラブルによりリタイア。ポイント獲得のチャンスを逃しました。シーズン後半には、横置きトランスミッションを搭載したJS33Cが投入されましたが、ポイント獲得には至りませんでした。しかし、ラリーニの16戦中13戦完走という高い完走率は、マシンの信頼性を示すものと言えるでしょう。今宮純氏も、ラリーニの完走率とマシンの完成度を高く評価しています。また、ティエリー・ブーツェンはテスト走行でJS33Cをドライブし、そのハンドリングに好印象を抱いたと発言しています。

スペック

ホイールベース：2,850 mm
フロントトラック：1,810 mm
リヤトラック：1,698 mm
トランスミッション：リジェ/ヒューランド 6速縦置き(JS33), エクストラック製 6速縦置き(JS33B), エクストラック製 6速横置き(JS33C)
イグニッション：コスワース
フューエルシステム：ルーカスオイル
ダンパー：コニ
ブレーキキャリパー：ブレンボ
* タイヤ：グッドイヤー

まとめ

リジェJS33は、予算制約の中、シンプルさと信頼性を追求した設計思想によって生み出されたマシンでした。結果的にはタイトル争いをするほどの性能は持ち合わせていませんでしたが、特に1990年シーズンのラリーニの完走率の高さと、ティエリー・ブーツェンの好評価は、シャシーの潜在能力の高さを示唆しています。 JS33は、リジェチームの努力と、決して恵まれた状況ではなかった状況下での技術力の高さを示す、象徴的なF1マシンと言えるでしょう。

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