リチャード・チャンセラー

リチャード・チャンセラーの生涯と業績

リチャード・チャンセラー（1556年11月10日没）は、イングランドの大胆な探検家および航海士として知られています。彼は1550年代に活動し、特にイングランドとロシアの商業的なつながりを深めることに大きく貢献しました。チャンセラーは白海を初めて横断し、その航路を開くことで、イングランド王国とロシア・ツァーリ国との間の貿易を促進しました。

前半生

チャンセラーはブリストル生まれで、有力なジェントリであるヘンリー・シドニー卿の家庭で育ちました。彼の航海士としてのキャリアは1550年に始まり、バーク船アーチャー号に水先案内人として乗り込むことでスタートします。この航海で、彼は東地中海を探索し、探検家のセバスチャン・カボットや著名な地理学者ジョン・ディーから航海術や地理学を学びました。

1552年から1553年、チャンセラーは北東航路の開拓を目指す新天地冒険商人会社に参加しました。この会社はイングランド産の毛織物の新しい市場を求めていました。

北東航路探検

チャンセラーは、ヒュー・ウィロビー卿が率いる探検隊に航海長として参加します。この隊は、北東航路を探るためにカボットの指示で設立されたものでしたが、探検中に嵐に襲われました。彼の乗ったエドワード・ボナヴェンチャー号は、他の2隻の船と分かれ、最終的にはノルウェー北部のヴァードーに到達します。ここでチャンセラーは、スコットランドの漁民から危険な海域に進むことの懸念を伝えられつつも、白海の入り口を見つけることに成功しました。

ロシアとの交流

チャンセラーの到達により、ロシアのツァーリ、イヴァン4世は彼をモスクワに招待しました。チャンセラーは、ロンドンよりも大きな木造の街モスクワの印象を記し、イヴァン4世との会談を成功させました。この会談は、イングランドとの交易路を開拓する大きな一歩となり、毛織物とロシアの物産との交換をスムーズにする道を開きました。

イヴァン4世は、チャンセラーにイギリス王への親書を託し、ロシア国内でのイングランド商人の自由貿易を認める旨を約束しました。この親書は、イングランドに帰国したチャンセラーからメアリー1世に手渡されました。

再訪と商業特権の確立

1554年にチャンセラーがイングランドに戻った際、彼は再度ロシアに派遣されます。この時、彼にはロシアから中国への航路を探るよう命じられました。再訪の際には、ウィロビーが発見したノヴァヤゼムリャについての情報も得ます。同年の夏、チャンセラーはイヴァン4世との交渉を重ね、商業特権を確立しました。

最後の航海

1556年、チャンセラーは初代駐イングランド大使オシプ・ネペヤを伴い帰国の航海に出ますが、途中で悪天候に見舞われました。そこでトロンハイム・フィヨルドに避難しようとしましたが、チャンセラーが乗っていたエドワード・ボナヴェンチャー号は嵐に遭遇し、座礁してしまいます。この事故で彼はほとんどの船員と共に命を落とすことになり、その生涯は幕を閉じました。

チャンセラーの探検と彼が築いた商業的なつながりは、後のイングランドとロシアの関係に深い影響を与え、彼の業績は歴史に残ることとなったのです。彼の探索によって開かれた北東航路は、その後の探検家たちに多くの可能性を示唆しました。

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