リッペ自由州

リッペ自由州：消滅したドイツの小国

リッペ自由州（Freistaat Lippe）は、1918年のドイツ革命によってリッペ侯国が解体された後に成立した、ドイツ国の州です。ヴァイマル共和政の下で議会内閣制を採用していましたが、1933年からのナチス・ドイツによる強制的同一化政策により、その自治権を失い、第二次世界大戦後の1947年にノルトライン＝ヴェストファーレン州に統合されました。

地理的特徴

リッペ自由州は、「リッパーラント」と呼ばれる地域に位置し、ヴェストファーレン地方の一部を構成していました。現在のノルトライン＝ヴェストファーレン州北東部のリッペ郡にほぼ相当します。プロイセン自由州のハノーファー県とヴェストファーレン県に挟まれた内陸に位置し、面積は約1200平方キロメートル、1947年時点での人口は約15万人でした。これは、当時のドイツ国において、面積では6番目、人口では3番目に小さい州でした。州都は、リッペ侯国の首都でもあったデトモルトで、人口は約2万5千人でした。

飛び地としてカッペルとリッペローデがあり、グレーフェンハーゲンにも飛び地がありました。

歴史

民主主義の導入と社会民主党の台頭

1918年のドイツ革命後、リッペ自由州は、完全普通選挙制と権力分立を特徴とする民主的な州へと移行しました。1920年12月21日に制定されたリッペ自由州憲法は、「国権は国民から生ずる」と明記し、国民投票による直接的な立法参加を認めるなど、当時としては非常に進歩的な内容でした。1919年から1933年まで、州議会ではドイツ社会民主党が第一党の地位を占め、クレメンス・ベッカーやハインリヒ・ドラーケといった社会民主党の指導者が州の行政を担いました。

ナチ党の進出と強制的同一化

しかし、1930年代に入ると、国家社会主義ドイツ労働者党（ナチ党）が勢力を拡大し、リッペ自由州にもその影響が及ぶようになります。1933年1月に行われた州議会選挙では、ナチ党が約40%の得票を獲得し、第一党となりました。ヨーゼフ・ゲッベルスは、リッペ自由州内の古い遺跡であるエクステルンシュタイネやヘルマン記念像などを政治的な目的で利用しました。ナチ党はこれらの遺跡を「ゲルマン民族の中心地」として宣伝し、大規模なパレードを開催することで、リッペ自由州における支持を拡大しました。その後、ナチ党はリッペ自由州の自由を奪い、州憲法を停止しました。

1933年3月31日の「ラントとライヒの均制化に関する暫定法」により、リッペ自由州はナチ党の支配下に置かれ、アルフレート・マイヤーが国家代理官として着任しました。これにより、リッペ自由州は事実上、ナチス・ドイツに統合され、その自治権を完全に失いました。

ライヒ参議院への参加

リッペ自由州は、ヴァイマル共和政期にはライヒ参議院に参加し、州の代表を送っていました。しかし、ナチ党の権力掌握後は、その役割も形骸化していきました。

構造

リッペ自由州の行政は、州議会が選出する3名の地域評議会によって運営されていました。地域評議会議長は、非公式ながら州首相に相当する地位にありましたが、ナチ党の台頭後は、州首相や国家代理官が実権を握るようになりました。1931年には、世界恐慌の影響で失業者が急増し、財源が枯渇したため、行政区画の再編が行われ、自由市と行政管区が2つの郡に統合されました。

地域評議会議長

1918-1920年：クレメンス・ベッカー (社会民主党)
1920-1933年：ハインリヒ・ドラーケ (社会民主党)
1933年：エルンスト・クラッペ (ナチ党)

州首相・国家代理官

1933-1936年：ハンス＝ヨアヒム・リーケ (ナチ党)、州首相
1933-1945年：アルフレート・マイヤー (ナチ党) 国家代理官、1936年からは州首相を兼務
1933-1945年：アドルフ・ヴェッダーヴィーレ (ナチ党)、マイヤー不在時の代理官

リッペ自由州は、その短い歴史の中で、民主主義の実験、ナチズムの台頭、そして最終的な消滅という、ドイツの激動の時代を象徴する存在でした。

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