リヒャルト・クーデンホーフ＝カレルギー

リヒャルト・クーデンホーフ＝カレルギー：欧州統合の先駆者、その生涯と日本との繋がり

リヒャルト・ニコラウス・エイジロ・クーデンホーフ＝カレルギー（1894年11月16日 - 1972年7月27日）は、伯爵家出身のオーストリア人政治活動家であり、汎ヨーロッパ連合の創設者として知られています。東京で生まれ、欧州統合の理念を提唱し、後の欧州連合（EU）構想の先駆けとなったことから、「EUの父」の一人とも呼ばれています。彼の生涯は、国際政治、哲学、ジャーナリズムと多岐にわたり、その思想は今日においても重要な意味を持っています。

生い立ちと家族

クーデンホーフ＝カレルギーは、オーストリア＝ハンガリー帝国駐日特命全権大使であったハインリヒ・クーデンホーフ＝カレルギー伯爵と、日本人の青山みつ（光子）の間に東京で生まれました。父はボヘミア貴族の家系であり、母は東京出身で大使公邸の使用人でした。一家は1896年に日本を離れ、オーストリア＝ハンガリー帝国へ移住し、ロンスペルク城で育ちました。

学問と第一次世界大戦

1908年、クーデンホーフ＝カレルギーはウィーンのギムナジウム、テレジアヌムに入学し、1913年に卒業しました。その後、ウィーン大学で哲学と近代史を専攻し、1917年に哲学博士号を取得しました。第一次世界大戦中、彼は胸部の疾患により徴兵を免れました。

汎ヨーロッパ主義の提唱

第一次世界大戦後、クーデンホーフ＝カレルギーはヨーロッパの平和と繁栄のためには、国家間の協力が不可欠であると考えるようになります。1923年、彼は著書『汎ヨーロッパ』を発表し、ヨーロッパの統合を提唱しました。この著書は大きな反響を呼び、汎ヨーロッパ運動が組織化されるきっかけとなりました。彼は汎ヨーロッパ連合を設立し、ヨーロッパの政治家や知識人たちに支持を広げました。

ナチスの弾圧と亡命

1933年、ナチス・ドイツが政権を握ると、クーデンホーフ＝カレルギーの汎ヨーロッパ運動は弾圧の対象となりました。彼はフランスに亡命し、1939年にはフランス国籍を取得しました。1940年にはアメリカ合衆国へ亡命し、ニューヨーク大学で教鞭を執りながら、汎ヨーロッパ運動を継続しました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、1946年にヨーロッパへ戻り、スイスのグシュタードを拠点に汎ヨーロッパ主義の普及に努めました。彼はヨーロッパ各国の政治家たちと交流し、ヨーロッパ統合への賛同を広げることに尽力しました。1962年にはオーストリア共和国から名誉大銀星勲章を受勲し、1967年には日本へ帰郷し、勲一等瑞宝章を受勲しました。

フリーメイソンとの関わり

クーデンホーフ＝カレルギーは、友愛団体フリーメイソンリーの会員でもありました。1922年にウィーンのロッジ「人道」に入会し、中央ヨーロッパ、フランス、英国、米国のフリーメイソンリーと接触を続けました。しかし、1926年にパン・ヨーロッパ運動とフリーメイソンリーの関係に対する批判から、ロッジを辞めました。

欧州の歌

1929年、クーデンホーフ＝カレルギーはヨーロッパのシンボルとなる『欧州の歌』としてベートーヴェンの『歓喜の歌』を提案しました。1955年には欧州評議会に提案を打診し、1972年に欧州評議会の閣僚委員会が『歓喜の歌』を欧州の歌として採択することを公式発表しました。

日本との関係

クーデンホーフ＝カレルギーは、日本人の母を持つということもあり、日本との関係を大切にしていました。彼は日本の文化や思想に理解を示し、汎アジア主義にも関心を寄せていました。1967年には71年ぶりに日本へ帰郷し、昭和天皇に謁見し、勲一等瑞宝章を受勲しました。

死去とその後

1972年、クーデンホーフ＝カレルギーはオーストリアで死去しました。彼の墓は、グシュタードの晩年を過ごした山荘を見下ろす場所にあります。彼の死後も、彼の提唱した汎ヨーロッパ主義は、欧州統合の理念として受け継がれ、今日の欧州連合（EU）の基礎となっています。

思想と影響

クーデンホーフ＝カレルギーの思想は、ヨーロッパの平和と繁栄のためには、国家間の協力が不可欠であるという信念に基づいています。彼は、ヨーロッパの統合を通じて、世界平和に貢献することを目指しました。彼の提唱した汎ヨーロッパ主義は、今日の欧州連合（EU）の理念に大きな影響を与えており、彼の功績は高く評価されています。

クーデンホーフ＝カレルギーは、その生涯を通じて、ヨーロッパの統合と世界平和のために尽力しました。彼の思想は、今日においても重要な意味を持ち、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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