リビア爆撃 (1986年)

リビア爆撃：1986年の軍事行動

1986年4月15日、アメリカ空軍と海軍によるリビアへの空襲が実施されました。この攻撃は、リビアの最高指導者ムアンマル・アル＝カッザーフィーの暗殺を狙ったものでした。結果的にはカッザーフィーを仕留めることはできなかったものの、アメリカは国際社会からの厳しい批判を受けることになりました。爆撃後、リビア政府はアメリカへ報復行動を起こし、1988年にパンアメリカン航空103便の爆破事件を引き起こしました。

背景

この軍事行動に至るまでには複雑な背景があります。アメリカはリビアがアブ・ニダルなどのテロ組織を支援していると非難し、シドラ湾における200海里の領海主張も国際法に反すると批判していました。そして、1985年の地中海でのイタリア客船のハイジャック事件や、ウィーンとローマの空港での同時爆破事件が、リビアのテロ行為としてアメリカに関連付けられるきっかけとなりました。これらの事件を受けて、アメリカはリビアに対する経済制裁を発動し、さらには軍事的圧力を強めました。

3月にはアメリカの空母がシドラ湾に展開し、ミサイル艇やレーダー基地を攻撃。続く4月5日には西ベルリンでの爆破事件が発生し、アメリカ人が犠牲となりました。これにより、アメリカはリビアがこれらのテロ行為に関与しているとの判断を下し、カッザーフィー暗殺の計画を決定しました。

攻撃の実施

攻撃前日、ロナルド・レーガン大統領は攻撃命令を発しました。作戦名は「エルドラド・キャニオン作戦」と名付けられ、イギリスのレイクンヒース空軍基地から発進したF-111戦闘機や地中海展開のアメリカ海軍艦載機が参加しました。イギリスからの部隊は過去の経路制限により、空中給油を行いながら迂回ルートを取ることになり、その結果、飛行経路は大幅に延長されました。

攻撃は15分間にわたって行われ、約300発の爆弾と48発のミサイルが投下されました。主な標的はカッザーフィーの居所や防空網、軍事施設でした。

被害の状況

リビア側の被害は詳細が不明ですが、民間人15名とカッザーフィーの1歳3ヶ月の養女ハナの死亡が報告されました。この事件を受けて、リビアは大規模な追悼を行いました。後に、2011年のリビア内戦によってカダフィ政権が崩壊し、養女のハナが実際には生存しており医師となっていることが明らかになったのです。また、アメリカ側ではF-111がシドラ湾上空で撃墜され、乗員2名が行方不明になりました。

リビアの報復

リビアはこの攻撃に対して報復行動を取ります。一例として、イタリアに駐留するアメリカ沿岸警備隊基地へのスカッドミサイル攻撃がありましたが、これは海に着弾し、人的被害はありませんでした。さらに、1988年のパンナム機爆破事件も、この爆撃への報復として位置づけられています。

結果とその後

この爆撃はアメリカに対する国際的な非難を集めましたが、国際関係やアメリカとソ連の外交には大きな影響を与えることはありませんでした。他国との外交関係にも特段の変化はみられなかったものの、リビアとの緊張関係は続くこととなりました。アメリカ合衆国の行動は、冷戦時代の国際社会における軍事介入の重要な一例として、今なお記憶に残っています。

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