リョーユーパン

株式会社リョーユーパン

株式会社リョーユーパンは、福岡県大野城市に本社を置く大手製パン会社です。社名はRYOYU Co.,Ltd.と表記され、「リョーユー」の略称で親しまれています。特に菓子パンの製造販売に強みを持っており、総生産量に占める食パンの割合は約2割と比較的少ないのが特徴です。1974年（昭和49年）に誕生したチョコレート菓子パン「マンハッタン」は、長年にわたり人気を博し続け、九州地方の人々にとって「ソウルフード」とも呼ばれる存在となっています。

設立と糧友グループの形成

リョーユーパンの歴史は、終戦後の1950年（昭和25年）5月に、佐賀県唐津市で資本金60万円をもって設立された「唐津糧友製パン株式会社」に始まります。これは、戦後の食糧難に対応するために政府が各地に設けたコッペパン工場のうち、唐津にあった工場が倒産したことを受け、北村政男氏が松尾九一氏の支援を得て立ち上げたものです。その後、1960年代に入ると福岡市に「糧友製パン株式会社」を設立して進出するなど、事業エリアを拡大。冷菓事業（株式会社糧友）や食品事業（ユニオン食品工業、東和食品など）にも進出し、関連会社を増やしていきました。1967年（昭和42年）には「糧友グループ事業協同組合」を組織し、各社が独立性を持ちながらも、全体として連携するグループ体制を構築。1979年（昭和54年）には、当時九州で4番目の規模であった「二葉製パン株式会社」とその子会社を系列下に加え、南九州における営業基盤を強化しました。こうして、1980年代初頭には、製パン事業を中心に、製麺、商事、運送、教育機関（学校法人糧友学園）など多岐にわたる事業を展開する糧友グループが形成されました。

九州市場での拡大と競争

国内最大手の山崎製パンが九州市場への本格参入を計画する中、リョーユーパンは競争優位を確立すべく対応を進めました。1980年（昭和55年）8月には、それまで分散していた管理本部や営業本部機能を、新たに建設した福岡工場（2代目）内に集約。創業地の唐津市から福岡県大野城市へ事実上の本社機能を移転し、九州の主要都市圏である福岡と北九州での体制を強化しました。1982年（昭和57年）には、大分県で大きなシェアを持っていた山内食糧の製パン事業を買収し、「糧友大分」として吸収。翌年には長崎や宮崎のメーカーとも連携するなど、九州全域での地盤固めを図りました。こうした取り組みにより、昭和末期から平成初頭にかけて、リョーユーパンは九州最大の製パンメーカーとなり、特に福岡、佐賀、大分、熊本の4県では圧倒的なシェアを獲得するに至りました。

多角化と新たな挑戦

九州での成功基盤を活かし、リョーユーパンは他地域や新たな事業分野への展開も進めました。1984年（昭和59年）には鳥取県の製パン会社を吸収合併して山陰地方へ、その後山口工場を建設し、広島にも進出して山陽地方への営業エリアを拡大しました。焼き立てパンを提供するベーカリー事業では、「マルメ」「リスドオル」などの低価格帯から、「カルベル」のような高級フランスパンを扱う業態まで多様な店舗を展開し、一時は多数の店舗網を築きました。また、自動クッキー製造販売機を使った「オートベーク」チェーンの展開や、コンビニエンスストア事業（RICマート）にも挑戦しましたが、コンビニ事業は後に再編されています。

海外市場への進出

1984年（昭和59年）には、香港にグループ初の海外拠点となる「糧友麵飽有限公司」を設立し、店舗を開設。海外進出の第一歩を踏み出しました。1988年（昭和63年）には台湾に子会社を設立し、現地ベーカリー事業を買収して店舗を開設しました。2010年代後半に入ると、海外展開を再び活発化させ、2017年（平成29年）にベトナムに「RYOYU BAKERY」を出店。同年にはフィリピンで合弁会社を設立し、翌2018年（平成30年）には韓国へも進出。2019年（令和元年）にはフィリピンでの工場稼働やマレーシアでの提携による工場開設など、アジア地域での事業展開を本格化させています。

近年の動向と商品

2002年（平成14年）には経営再建に着手するなど困難も経験しましたが、その後は事業を継続しています。現在の主要な生産拠点としては、福岡工場（本社併設）、熊本工場、唐津工場、山口工場、佐賀工場があります。代表的な商品としては、「マンハッタン」の他に、リンゴ風味のクリームパン「ヤキリンゴ」（1962年発売）、ロングセラーの「銀チョコ」、チーズ風味のマヨネーズが入った「チーズデンマーク」、カステラとクリームをウエハースで挟んだ「カステラサンド」など、個性豊かな菓子パンが多数あります。1977年（昭和52年）に誕生したシンボルキャラクター「リョーちゃん」も、多くの人々に親しまれています。

様々な挑戦と困難を乗り越えながら、リョーユーパンは九州を基盤としつつ、国内他地域やアジアへとその事業を広げています。

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