リングマガジン ファイター・オブ・ザ・イヤー

リングマガジン ファイター・オブ・ザ・イヤー

アメリカ合衆国で長年にわたり親しまれているボクシング専門誌『リングマガジン』は、毎年、その年に最も目覚ましい活躍を遂げたボクサーを「ファイター・オブ・ザ・イヤー」として選出し、表彰しています。この栄誉ある称号は、1928年の創設以来、ボクシング界における年間最優秀選手の証として、高い権威を保ち続けています。

歴史に名を刻んだ受賞者たち

この賞の長い歴史の中で、数多くの伝説的なボクサーたちがファイター・オブ・ザ・イヤーに輝いてきました。創設年の1928年には、ヘビー級世界王者のジーン・タニーが初代受賞者としてその名を刻んでいます。黎明期には、トミー・ローランやマックス・シュメリングといった当時のスター選手が選ばれました。

1930年代後半から1940年代にかけては、「褐色の爆撃機」と呼ばれたヘビー級の偉人、ジョー・ルイスが圧倒的な強さを見せ、史上最多となる4度の受賞を達成しています。この時期には、後に「伝説」と称されるシュガー・レイ・ロビンソンも1942年に初めて選出されています。

1950年代には、無敗のヘビー級王者ロッキー・マルシアノが3度輝き、その不屈のファイトスタイルとともに記憶されています。この時代を代表するフロイド・パターソンやインゲマル・ヨハンソンも複数回受賞者リストに名を連ねています。

ボクシング史上最高の選手の一人とされるモハメド・アリは、1960年代から1970年代にかけて実に6度もこの賞を獲得しており、ジョー・ルイスの記録を塗り替えました。アリの受賞回数は、この賞の歴史上、最多記録として現在も破られていません。また、この時期にはディック・タイガー、ジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマンといったヘビー級のレジェンドたちが顔を揃えています。

1980年代は、まさに群雄割拠の時代でした。シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラーという「中量級四天王」の一角を占める選手たちが複数回受賞。さらに、マイク・タイソンが登場し、その圧倒的な強さで2度選ばれています。イベンダー・ホリフィールドもこの時代に初めて受賞しました。

1990年代には、フリオ・セサール・チャベス、ロイ・ジョーンズ・ジュニア、オスカー・デ・ラ・ホーヤといったスーパースターたちが誕生し、ファイター・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。イベンダー・ホリフィールドは90年代にも受賞を重ね、通算3度の受賞を果たしています。

2000年代に入ると、フロイド・メイウェザー・ジュニアやマニー・パッキャオといった現代ボクシングを牽引するスターたちが複数回受賞。パッキャオは3度選ばれています。バーナード・ホプキンスやジェームズ・トニーといった実力者もこのリストに加わりました。

2010年代から現在にかけては、サウル・アルバレスが複数回受賞し、現代のトップスターとして輝きを放っています。タイソン・フューリーも2度選ばれています。そして、2023年には日本の井上尚弥がアジア人として初めてこの名誉ある賞を受賞し、世界のボクシング界にその名を轟かせました。

ファイター・オブ・ザ・イヤーは、単に世界タイトルを獲得しただけでなく、その年のパフォーマンス、対戦相手のレベル、ボクシング界全体への貢献度などが総合的に評価される、ボクサーにとって最高の栄誉の一つと言えるでしょう。この賞の受賞者リストは、そのままボクシング史の偉大な選手たちの系譜を示しています。

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