リンチェン・バルスボルド

リンチェン・バルスボルド（Rinchen Barsbold、1935年12月21日 - ）は、モンゴルを代表する古生物学者・地質学者であり、古脊椎動物学と中生代層序学を専門としています。彼は長年にわたり地質学研究所に勤務し、モンゴルの古生物学研究を牽引してきました。

業績

バルスボルドの最大の功績は、世界最大級の恐竜コレクションの発見と復元に尽力したことです。彼の研究活動は、これまで注目されることの少なかったモンゴルの古生物学研究を世界的なレベルに引き上げ、ユーラシア大陸における恐竜進化の後期段階について、より現代的な理解を促す上で重要な役割を果たしました。

特に、バルスボルドは共産圏における恐竜古生物学に大きな影響を与えました。ゴビ砂漠の獣脚類を主題とした博士論文から始まった彼の研究は、彼自身をその恐竜に関する第一人者としての地位を確立しました。1983年には、異なる系統の獣脚類において、鳥類に特有と考えられていた多くの特徴が様々な組み合わせで進化してきたことを指摘し、大きな注目を集めました。

彼はこの「鳥化」という概念に基づき、特定の獣脚類の系統が、鳥類へと進化を遂げたという仮説を提唱しました。この学説は、1990年代後半以降に羽毛恐竜の化石が多数発見されるようになってから、その重要性が再認識されるようになりました。

バルスボルドが自身の学説を発表した1983年当時は、モンゴルの科学界と西側諸国の科学界の間にはほとんど交流がありませんでした。さらに、バルスボルドの初期の論文は通常ロシア語で発表されていたため、西側の科学者にとってアクセスが難しい状況にありました。また、当時のソ連における鳥類古生物学の第一人者であったエフゲニー・クーロチキンが、獣脚類と鳥類とのつながりに対して批判的な態度をとっていたことも、バルスボルドの研究が当初、モンゴルやソ連、その同盟国の「恐竜」古生物学者の間でより大きな影響を与えた一因と言えるでしょう。

恐竜の同定

Barsboldia Maryanska and Osmolska, 1981 は、彼への献名として名付けられたものです。

バルスボルドによって命名された恐竜の属と科は以下の通りです。

Aepyornithomimus（T. Chinzorigらと共著 2017年）：エピオルニトミムス
Adasaurus (1983年命名)：アダサウルス
Anserimimus (1988年)：アンセリミムス
Conchoraptor (1986年)：コンコラプトル
Enigmosauridae (1983年)：エニグモサウルス科
Enigmosaurus (A. Perleと共同で命名　1983年)：エニグモサウルス
Gallimimus (H. Osmólska、E. Roniewiczと共同　1972年)：ガリミムス
Garudimimus , Garudimimidae (1981年)：ガルディミムスとガルディミムス科
Harpymimus , Harpymimidae (A. Perleと共同　1984年)：ハルピミムスとハルピミムス科
"Ingenia" (1981年)：インゲニア（後にAjancingeniaに改名）
Ingeniinae (1981年)：インゲニア亜科
Oviraptoridae (1976年)：オヴィラプトル科
Segnosauria (A. Perleと共著 1980年)：セグノサウルス亜目

関連項目

ネメグト盆地
ネメグト層
バルンゴヨット層
* ジャドフタ層

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