リヴィングストン島

リヴィングストン島：南極の歴史と自然が息づく島

リヴィングストン島は、サウスシェトランド諸島に属する島の一つで、南極大陸のロケモレール岬から北西に約110km、南米大陸のホーン岬から南東に約809kmの位置にあります。この島は、1819年に南緯60度以南の島嶼として初めて発見され、1820年代初頭から国際的にその名で知られるようになりました。

地勢

東西に約73km、南北の幅は最も狭い部分で約5km、最も広い部分で約36km。面積は約798平方キロメートルです。島の周辺には多くの小島や岩礁が点在し、特に北側にはラギット島などの大きな島があります。

海岸線の大部分は氷崖で形成されており、島の大部分は氷帽に覆われています。中央部から西部にかけてはアイスドームや氷の平原が広がり、東部には山がちな地形と多数の氷河峡谷が見られます。氷河には、隣接するデセプション島の火山活動による火山灰層が含まれているのが特徴です。

島の西端のバイアーズ半島から東に向かうと、氷に覆われていない海岸線が点在しており、島の東部では地形が険しいため、山の斜面が露出している箇所が多く見られます。島の最高峰はフリースラント山で、タングラ山地、ボールズ尾根、ヴィディン高地などの高地が連なっています。

海岸線は複雑に入り組み、サウス湾、ファルス湾、ムーン湾など、多くの湾や半島を形成しています。

気候

気候は非常に変わりやすく、強風、多湿、短い日照時間が特徴です。オーストラリアの登山家は「世界最悪の気候だった」と語っています。ホワイトアウトやブリザードは一年中発生する可能性があり、夏の気温が3℃を超えることは稀で、冬は-11℃程度まで下がり、体感温度はさらに5〜10℃低くなります。

歴史

1819年、ウィリアム・スミスがリヴィングストン島を発見し、ウィリアムズ岬と名付けられました。これは、南極条約で保護されている南緯60度以南の土地として初めての発見でした。

同年、スペインの戦列艦サン・テルモがドレーク海峡で難破し、リヴィングストン島の北海岸に沈没しました。乗員600人以上は全員死亡しましたが、もし生存者がいれば、南極地域に初めて上陸した人物となっていたでしょう。

1821年、ファビアン・ゴットリープ・フォン・ベリングスハウゼンとミハイル・ラザレフは南極を周航し、多くの英米の猟船や毛皮猟師を発見しました。

地名

島内には避難小屋の跡や船乗りの遺物が多数存在し、南極地域で2番目に遺跡が多い場所となっています。地名の多くは、初期の歴史に由来しており、米国の船乗りや捕鯨商人の名前、アザラシ漁船の名前などが使用されています。

また、19世紀の船乗りによって名付けられたデヴィルズ岬やヘル・ゲーツなど、興味深い名前も存在します。ロベリー海岸は、米国の船乗りが毛皮を奪われたことに由来する名称です。

島名のリヴィングストンやフリースラント山など、由来が不明なものもあります。リヴィングストンという名前は、1821年にロバート・フィルデスによって出版されたものに初めて登場しました。

研究拠点

1957年から58年にかけてハンナー岬で使用されたステーションPが最初の居住施設であり、恒久的な科学施設としては、スペインのフアン・カルロス1世基地とブルガリアのオフリドの聖クリメント基地が1988年に設立されました。他にも、チリと米国のシレフ基地などが存在します。

非常用のフィールドキャンプが島の遠いエリアの研究をサポートしており、バイアーズ半島にはスペインのキャンプ・バイアーズが常設されています。キャンプ・アカデミアは、ブルガリア科学アカデミーによって命名され、南極調査への貢献に対する謝意が込められています。

保護区域

南極条約に基づき、人間の存在と活動は厳しく制限されており、リヴィングストン島には1966年以来、自然保護区が2つ設定されています。化石、アザラシやペンギンのコロニー、19世紀に遡る遺跡などが保護対象となっています。

サン・テルモ号沈没の死者追悼として建てられたケルンや、オフリドの聖クリメント基地にあるレーム・ドッグ・ハットが南極史跡記念物として登録されています。

旅行

サウスシェトランド諸島への船旅は1958年に始まり、近年では毎年多くの観光客が訪れています。クルーズ船でリヴィングストン島南岸のハンナー岬やハーフムーン島などを巡るツアーが人気です。

エレナ山とレニアー岬の間は、山スキーや登山で知られており、ハーフムーン島周辺を巡るクルーズ船からゾディアックボートに乗り換えて向かうことができます。

栄誉

ブルガリア国内には、リヴィングストン島にちなんだ通りや広場が存在しています。

リヴィングストン島は、南極の厳しい環境の中で、豊かな自然と歴史を今に伝える魅力的な島です。

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