ルイス・B・プラー

ルイス・バーウェル・"チェスティ"・プラー

ルイス・バーウェル・"チェスティ"・プラー（Lewis Burwell "Chesty" Puller, 1898年6月26日 - 1971年10月11日）は、アメリカ海兵隊の歴史において、最も著名かつ伝説的な将校の一人として名を馳せた人物です。長年にわたり海兵隊員として勤務し、輝かしい経歴の中で数多くの勲章を受章しました。最終階級は海兵隊中将です。

生い立ちと初期の軍歴

1898年、バージニア州ウェストポイントで生を受けたプラーは、南北戦争の復員兵たちが語る逸話を聞きながら育ちました。特に、南軍の英雄トーマス・"ストーンウォール"・ジャクソン将軍の話に強く心を惹かれたといいます。若い頃から軍人への憧れを抱き、1916年には米墨国境戦争への参加を目指して陸軍に志願しますが、年齢が若すぎたことや母親の許可が得られなかったことから実現しませんでした。

翌年、バージニア州立軍事学校に入学しますが、1918年8月に第一次世界大戦が勃発すると、「銃のあるところに行かねば！」という言葉を残して学校を中退します。フランスでのベローウッドの戦いにおける第5海兵連隊の活躍に触発され、海兵隊に志願。基礎訓練を終えた後、拡大する海兵隊の中で下士官学校、さらに士官候補生学校へと進みました。1919年6月には予備役少尉となりますが、終戦に伴う大規模な軍縮により、わずか10日後には非活性化され、伍長へと降格されました。

戦間期の活動

伍長となったプラーは、アメリカ占領下のハイチに派遣され、ハイチ憲兵隊に中尉として出向しました。この地で5年間を過ごし、反政府勢力カコ鎮圧のための作戦に40回以上参加。将校への復帰を二度申請し、1924年3月6日に少尉として正規の将校に復帰を果たします。その後、バージニア州の基地や基本術科学校などで勤務しました。

1928年12月からはニカラグア国家警備隊に出向し、治安維持作戦に参加。1930年8月19日に最初の海軍十字章、1932年9月から10月にかけての勤務中には二つ目の海軍十字章を受章しています。

ニカラグア勤務を終えた後は、中華民国（北京）の米国公使館付分遣隊や、アジア艦隊の重巡オーガスタに勤務し、在中華民国海兵隊の指揮官などを歴任しました。1936年6月に帰国し、基本術科学校の教官を務めた後、再び重巡オーガスタ付分遣隊や、上海の第4海兵連隊での勤務を経て、1941年8月末には米本土に呼び戻され、第1海兵師団第7海兵連隊第1大隊の大隊長となりました。

第二次世界大戦

太平洋戦争が勃発すると、プラー率いる第7海兵連隊は1942年5月にサモアへ派遣され、同年9月にはガダルカナル島に展開する第1海兵師団のもとに再配置されました。ガダルカナル島到着後、マタニカウ川の戦いでは、孤立した三つの中隊を日本軍の包囲から救出するため、海岸から駆逐艦に砲撃支援を要請し、自身は部隊が救出されるまで指揮を執り続けました。この功績で銅星章を受章しています。この救出作戦では、沿岸警備隊員のダグラス・マンロー上等信号手が海兵隊員を守るために戦死し、沿岸警備隊員として史上唯一の名誉勲章受章者となりました。

続いて、ヘンダーソン飛行場の戦いでは、連隊規模の日本軍部隊の攻撃をプラー率いる第1大隊と陸軍第164歩兵連隊第3大隊のわずか二つの大隊で三時間にわたり阻止し、飛行場の防衛に成功。この戦功により、三つ目の海軍十字章を受章し、名誉勲章授与の推薦も受けました。

その後、第7海兵連隊長に就任。1943年末から1944年初めにかけてのグロスター岬への上陸作戦に参加し、四つ目の海軍十字章を受章。さらに、大佐に昇進し第1海兵連隊長となった彼は、1944年9月から10月にかけてのペリリューの戦いを指揮し、一つ目のレジオン・オブ・メリット勲章を受章しました。この激戦で第1海兵連隊は多くの犠牲を出しています。同時期、プラーの弟であるサミュエル・D・プラー大佐がグアムで戦死しました。

終戦後、プラーは米本土での訓練部隊や予備役管区、ハワイでの海兵隊兵舎の司令官などを務めました。

この第二次世界大戦中に、彼は「チェスティ」（胸板が厚い、転じて傲慢な、の意）という愛称で呼ばれるようになりました。その大胆不敵で喧嘩好きな性格からつけられたと言われますが、部下たちの間では、戦傷による鉄製の胸郭が入っているため、あるいは絶叫し続けたことで胸筋が発達したため、といった伝説的な解釈が語り継がれました。

朝鮮戦争

朝鮮戦争が勃発すると、プラーは再び第1海兵連隊長として戦場に戻りました。1950年9月15日の仁川上陸作戦に参加し、銀星章を受章。その後も戦功を重ね、二つ目のレジオン・オブ・メリット勲章、陸軍より殊勲十字章、そして極寒の長津湖の戦いにおける指揮に対して五つ目の海軍十字章を受章しました。この長津湖の戦いでは、包囲された状況下で「我々はしばらくの間、敵を探し求めていた。そしてついに奴らを見つけた。我々は包囲された。これで話が簡単になった」という有名な言葉を残しています。

1951年1月には准将に昇進し、第1海兵師団の副師団長に就任。一時的に師団長代行も務め、困難な戦況の中で部隊を率いました。1951年5月に任務を終え帰国し、その後はキャンプ・ペンドルトンや太平洋訓練部隊で指揮を執りました。

戦後と退役

朝鮮戦争後、プラーはキャンプ・レジューンに駐屯する第2海兵師団長や基地副司令官を歴任。この間に少将、中将と昇進を重ねます。しかし、脳卒中に苦しむようになり、1955年11月1日に海兵隊を退役しました。退役後は故郷バージニア州で静かに暮らし、1971年10月11日にその生涯を終えました。

家族と遺産

プラーの息子、ルイス・Jr.もまた海兵隊員となり、ベトナム戦争で地雷により重傷を負いました。義理の息子ウィリアム・デブニーも海兵隊員としてベトナム戦争のケサン戦闘基地防衛戦で活躍し、後に海軍十字章を改めて授与されています。また、彼は陸軍の英雄ジョージ・パットン将軍と遠い血縁関係にありました。

プラーは、アメリカ軍人として授与されうる勲章のうち、最高位である名誉勲章に次ぐ高位の勲章を合計6度受章しています。具体的には、海軍十字章を5回、陸軍殊勲十字章を1回です。海軍十字章を5度受章した軍人は、アメリカ軍の歴史においてプラーを含めてわずか2人しかいません。

伝説の海兵隊員

ルイス・"チェスティ"・プラーの存在は、今日でもアメリカ海兵隊の中で語り継がれる伝説となっています。訓練や士気高揚の場で彼の名が使われることは珍しくありません。「おやすみなさい、チェスティ・プラー、あなたがどこにいようとも！」「チェスティ・プラーは諦めない！」といった言葉は、訓練生たちの間に広く浸透しています。また、ミリタリーケイデンス（行進曲）や訓練歌にも「チェスティ・プラーによし、おれにもっとよし」といった形で彼の名が登場し、海兵隊員の団結や不屈の精神の象徴とされています。懸垂を行う際に「チェスティのために1回！」と掛け声をかける習慣もあります。

プラーは、部下である下士官兵への配慮でも知られていました。装備や規律の改善に努め、時に厳格でありながらも、不当な扱いは許しませんでした。例えば、些細な規律違反で部下に多数の敬礼を命じた少尉に対し、敬礼を受けた将校は必ず答礼せねばならないことを指摘し、少尉自身に答礼を命じたという逸話や、誤射事故で部下より自身に重い罰金を課した話などは、彼の部下への愛情を示すものとして語り継がれています。

彼の功績と名誉を称え、複数のアメリカ海軍艦艇、海兵隊の施設、道路などが「ルイス・B・プラー」や「ジェネラル・プラー」の名を冠しています。また、海兵隊の公式マスコットであるブルドッグには、伝統的に「チェスティ・プラートン」という名前が受け継がれています。2005年には、アメリカ郵便公社発行の切手シリーズ「名高き海兵隊員」の一人としてプラーの切手が登場しました。

ルイス・"チェスティ"・プラーは、その類稀なる勇気、リーダーシップ、そして部下からの深い敬愛をもって、今なおアメリカ海兵隊の歴史に燦然と輝く英雄であり続けています。

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