ルイーザ・マリア・テレーザ・ステュアート
ルイーザ・マリア・テレーザ・ステュアート（Louisa Maria Teresa Stuart, 1692年 - 1712年）は、17世紀末から18世紀初頭にかけて生きたステュアート朝の王女です。イングランドおよびスコットランドの王位を追われたジェームズ2世（7世）と、その二番目の妻であるモデナ公家出身のメアリー王妃との間に生まれた末娘でした。兄は、後にジャコバイト運動の指導者となるジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアート（「大僭称者」）です。王位回復を目指すジャコバイトたちの間では「プリンセス・ロイヤル」として敬われ、現代スコットランドのジャコバイト支持者からは今なお「海の彼方の王女（Princess over the Water）」という愛称で親しまれています。
ルイーザ王女は、両親が名誉革命により故国を追われ、亡命生活を送っていたフランスのサン＝ジェルマン＝アン＝レー城で生を受けました。父ジェームズ2世は、カトリック信徒であるメアリー王妃が息子ジェームズを出産した際に、プロテスタントの間で不正の疑い（いわゆる「真鍮のあんか事件」）が持ち上がり、これが名誉革命の引き金の一つとなった経験を踏まえ、末娘の誕生にあたっては周到な配慮を見せました。王位を簒奪した娘メアリー2世だけでなく、多くのプロテスタント貴婦人たちに立ち会いを求める書簡を送ったのです。しかし、この呼びかけに応じて海峡を渡った者は誰もいませんでした。
有名な歴史家であるマコーリー卿は、この時のジェームズ2世の用心深さについて触れ、「もし1688年の息子の誕生時に同じ注意を払っていれば、ステュアート家は今もブリテン島を治めていたかもしれない」と述懐しています。しかし、王冠を取り戻すことは確保するよりも難しい現実があり、ルイーザの誕生そのものがイングランドの世論に大きな影響を与えることはありませんでした。生まれた王女は、洗礼の代父となったフランス王ルイ14世にちなんでルイーザ・マリアと名付けられ、後に堅信礼でテレーザの名が加えられました。ジェームズ2世は、苦難の中に生まれた末娘を神が遣わした「慰め」と見なし、彼女をしばしばフランス語で「慰め」を意味するLa Consolatriceと呼び、深く慈しみました。
ルイーザ王女は、4歳年上の同母兄ジェームズとともに、フランス国内のジャコバイト亡命者たちに囲まれて育てられました。イングランド人のカトリック司祭からラテン語、歴史、宗教などを学び、第2代ミドルトン伯爵夫人がガヴァネス（女家庭教師）を務めました。国王の側近だった第4代パース伯爵は、幼い王女が生まれ持った愛らしく、誰からも好かれる性質を備えていることを称賛しています。
ジェームズ2世は王女の誕生時にはすでに60歳に近く、健康を害していました。1701年、王は病状が悪化する中で子供たちと再会した際、娘ルイーザに「若いうちに神に仕え、貞節を女性の最高の名誉と心得よ」と諭しました。同年9月、ジェームズ2世が脳出血で死去すると、ルイ14世は慣例を破り、ジェームズ・フランシス・エドワードをイングランド・スコットランド王として承認しました。ルイーザ王女は、ガヴァネスとともにパリ郊外のパッシーに移り、ローザン公爵夫妻の後見を受けて成長します。
成長したルイーザは、ダンスやオペラを愛する陽気な女性となり、ヴェルサイユ宮廷でもその人柄から人気を集めました。フランスのベリー公シャルルやスウェーデンのカール12世など、有力な王家との縁談も持ち上がりましたが、王女の政治的に不安定な立場や、宗派の違いなどが障壁となり、いずれも実現には至りませんでした。王女はまた、自身の家族のために故国を離れて亡命生活を送るジャコバイトたちが払っている犠牲に心を痛め、彼らの娘たちが教育を受けられるよう、カトリック・プロテスタントの区別なく資金援助を行うなど、慈善活動にも熱心でした。
しかし、その輝かしい生涯は突然終焉を迎えます。1712年4月、ルイーザ王女は兄ジェームズとともに当時猛威を振るっていた天然痘に罹患しました。兄は幸いにも回復しましたが、王女は病に勝てず、わずか19歳でこの世を去りました。遺体は、父ジェームズ2世が葬られていたパリのベネディクト会系のイングランド教会に安置されました。
王女の死は、故国を追われた王家のコミュニティだけでなく、フランスやイングランドの多くの人々に深い悲しみをもたらしました。あるフランス貴族は、王女が「全欧州の賞賛の的」であり、これほど悼まれた王女はいないと記しています。イングランドのダートマス伯爵は、王女の死が「イングランドが経験した最も悲しい出来事」だと述べた人物の言葉を伝え、もし彼女が異母姉アン女王の意向でドイツのゲオルク王子と結婚していれば、国内の政治対立を解消する希望となったかもしれないと惜しみました。ルイ14世の後妻マントノン侯爵夫人は、愛娘を失った母メアリー王妃の悲しみを「絶望の化身」と表現し、王女が母にとって「唯一の慰め」であったと記しています。歴史家トマス・スティーヴンも、多くのイングランド人が王女の死を悼み、彼女に接した人々が皆、その高潔な人格、優れた機智、そして高貴な血筋にふさわしい才能を称賛したと述べています。
王女が葬られたパリのベネディクト会系イングランド教会は、フランス革命期に破壊されました。ルイーザ王女と父ジェームズ2世の遺骸は後に回収され、1844年の時点ではパリ5区のヴァル＝ド＝グラース陸軍病院に安置されていたと伝えられています。短い生涯ではありましたが、ルイーザ王女はその愛らしい人柄と高潔な精神で、多くの人々の記憶に残る存在となりました。
ルイーザ王女は、両親が名誉革命により故国を追われ、亡命生活を送っていたフランスのサン＝ジェルマン＝アン＝レー城で生を受けました。父ジェームズ2世は、カトリック信徒であるメアリー王妃が息子ジェームズを出産した際に、プロテスタントの間で不正の疑い（いわゆる「真鍮のあんか事件」）が持ち上がり、これが名誉革命の引き金の一つとなった経験を踏まえ、末娘の誕生にあたっては周到な配慮を見せました。王位を簒奪した娘メアリー2世だけでなく、多くのプロテスタント貴婦人たちに立ち会いを求める書簡を送ったのです。しかし、この呼びかけに応じて海峡を渡った者は誰もいませんでした。
有名な歴史家であるマコーリー卿は、この時のジェームズ2世の用心深さについて触れ、「もし1688年の息子の誕生時に同じ注意を払っていれば、ステュアート家は今もブリテン島を治めていたかもしれない」と述懐しています。しかし、王冠を取り戻すことは確保するよりも難しい現実があり、ルイーザの誕生そのものがイングランドの世論に大きな影響を与えることはありませんでした。生まれた王女は、洗礼の代父となったフランス王ルイ14世にちなんでルイーザ・マリアと名付けられ、後に堅信礼でテレーザの名が加えられました。ジェームズ2世は、苦難の中に生まれた末娘を神が遣わした「慰め」と見なし、彼女をしばしばフランス語で「慰め」を意味するLa Consolatriceと呼び、深く慈しみました。
ルイーザ王女は、4歳年上の同母兄ジェームズとともに、フランス国内のジャコバイト亡命者たちに囲まれて育てられました。イングランド人のカトリック司祭からラテン語、歴史、宗教などを学び、第2代ミドルトン伯爵夫人がガヴァネス（女家庭教師）を務めました。国王の側近だった第4代パース伯爵は、幼い王女が生まれ持った愛らしく、誰からも好かれる性質を備えていることを称賛しています。
ジェームズ2世は王女の誕生時にはすでに60歳に近く、健康を害していました。1701年、王は病状が悪化する中で子供たちと再会した際、娘ルイーザに「若いうちに神に仕え、貞節を女性の最高の名誉と心得よ」と諭しました。同年9月、ジェームズ2世が脳出血で死去すると、ルイ14世は慣例を破り、ジェームズ・フランシス・エドワードをイングランド・スコットランド王として承認しました。ルイーザ王女は、ガヴァネスとともにパリ郊外のパッシーに移り、ローザン公爵夫妻の後見を受けて成長します。
成長したルイーザは、ダンスやオペラを愛する陽気な女性となり、ヴェルサイユ宮廷でもその人柄から人気を集めました。フランスのベリー公シャルルやスウェーデンのカール12世など、有力な王家との縁談も持ち上がりましたが、王女の政治的に不安定な立場や、宗派の違いなどが障壁となり、いずれも実現には至りませんでした。王女はまた、自身の家族のために故国を離れて亡命生活を送るジャコバイトたちが払っている犠牲に心を痛め、彼らの娘たちが教育を受けられるよう、カトリック・プロテスタントの区別なく資金援助を行うなど、慈善活動にも熱心でした。
しかし、その輝かしい生涯は突然終焉を迎えます。1712年4月、ルイーザ王女は兄ジェームズとともに当時猛威を振るっていた天然痘に罹患しました。兄は幸いにも回復しましたが、王女は病に勝てず、わずか19歳でこの世を去りました。遺体は、父ジェームズ2世が葬られていたパリのベネディクト会系のイングランド教会に安置されました。
王女の死は、故国を追われた王家のコミュニティだけでなく、フランスやイングランドの多くの人々に深い悲しみをもたらしました。あるフランス貴族は、王女が「全欧州の賞賛の的」であり、これほど悼まれた王女はいないと記しています。イングランドのダートマス伯爵は、王女の死が「イングランドが経験した最も悲しい出来事」だと述べた人物の言葉を伝え、もし彼女が異母姉アン女王の意向でドイツのゲオルク王子と結婚していれば、国内の政治対立を解消する希望となったかもしれないと惜しみました。ルイ14世の後妻マントノン侯爵夫人は、愛娘を失った母メアリー王妃の悲しみを「絶望の化身」と表現し、王女が母にとって「唯一の慰め」であったと記しています。歴史家トマス・スティーヴンも、多くのイングランド人が王女の死を悼み、彼女に接した人々が皆、その高潔な人格、優れた機智、そして高貴な血筋にふさわしい才能を称賛したと述べています。
王女が葬られたパリのベネディクト会系イングランド教会は、フランス革命期に破壊されました。ルイーザ王女と父ジェームズ2世の遺骸は後に回収され、1844年の時点ではパリ5区のヴァル＝ド＝グラース陸軍病院に安置されていたと伝えられています。短い生涯ではありましたが、ルイーザ王女はその愛らしい人柄と高潔な精神で、多くの人々の記憶に残る存在となりました。
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