ルカ・デッラ・ロッビア

ルカ・デッラ・ロッビア（Luca della Robbia, 1400年 - 1481年）は、イタリア・ルネサンス期にフィレンツェで活躍した彫刻家です。特に、釉薬を施したテラコッタ（焼成粘土）を用いた作品で知られ、その技術は後世の陶芸家たちにも大きな影響を与えました。ルカの作品は、宗教的なテーマを扱いながらも、温かみのある表現と卓越した技術によって、人々の心を捉えてきました。

生涯

ルカの初期の修行時代や、具体的な作品の制作時期については、正確な記録が残されていません。しかし、彼がフィレンツェで生まれたことは確実です。初めて記録に登場するのは、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂（ドゥオーモ）のために制作した『カントリア』（聖歌隊席）(1431-1438年)です。この作品は、詩篇第150番の「神を讃えよ」をテーマに、歌い踊る子供たちを生き生きと描いたもので、ルカの初期の代表作とされています。

その後、ルカは約20年にわたり、大理石やブロンズを用いた彫刻作品を制作しました。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂鐘楼のレリーフ（1437年）、サンタ・マリア・イン・ペレトラ教会のタベルナクル（1443年）、『カントリア』に付属するブロンズの天使像などが挙げられます。また、ミケロッツォ・ディ・バルトロメオと共に制作したサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の聖具室の扉（1469年完成）は、ルカのシンプルな構図と、ロレンツォ・ギベルティの複雑な表現とは対照的です。

ルカがいつ彩色テラコッタの技法を始めたかは不明ですが、この技法を駆使した作品は、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のレリーフ『キリストの復活』（1445年）と『キリストの昇天』（1446年）に見ることができます。これらの作品では、鉛ガラスのスリップ（泥漿）を塗布し焼成することで、独特の光沢と美しい彩色を実現しています。また、フィレンツェのパッツィ家礼拝堂の『十二使徒』連作など、テラコッタを用いたレリーフ作品は、ルカの独創性と技術の高さを示すものであり、それ以前にもそれ以後にも類を見ない完成度を誇ります。

ルカは、数多くの装飾レリーフや祭壇画を制作しましたが、その多くは一族や助手たちとの共同制作でした。1482年2月、フィレンツェで亡くなりました。

作品と評価

ルカは、建築物の外装に使用可能な、耐久性の高いテラコッタ釉薬を開発したことでも知られています。特に有名な作品には、『キリスト誕生』（1460年頃）、『聖母子』（1475年頃）、サン・ミニアート・アル・モンテ教会のポルトガル枢機卿礼拝堂の天井（1466年）などが挙げられます。これらの作品は、ルネサンス期におけるテラコッタ彫刻の可能性を大きく広げました。

同時代の建築家レオン・バッティスタ・アルベルティは、ルカの才能をドナテッロ、ロレンツォ・ギベルティ、フィリッポ・ブルネレスキ、マサッチオといった巨匠たちに匹敵すると賞賛しました。ルカの作品は、ルネサンス美術の革新性を示すとともに、宗教的な感情を豊かに表現し、今日においても多くの人々に感動を与え続けています。

ルカ以降、デッラ・ロッビア家は土器芸術家の名門となり、甥のアンドレア・デッラ・ロッビア、その子ジョヴァンニ・デッラ・ロッビアを輩出しました。彼らもまた、ルカの技法を継承し、ルネサンス期の美術に貢献しました。

もう一度検索