ルノー・オーストラル

オーストラル（AUSTRAL）は、フランスを拠点とする自動車メーカー、ルノーによって製造・販売されている中型のクロスオーバーSUVです。その車名『オーストラル』は、ラテン語の『Australis』に由来しており、デザインやイメージには南半球の持つ活気や情熱が込められています。

概要と位置づけ

このモデルは、まず2021年12月6日にインターネット上のメディアを通じてその存在が明らかにされ、翌2022年3月8日に正式な発表が行われました。オーストラルは、ルノーブランドの新しいエンブレム『ロザンジュ』を初めて採用したモデルの一つです。サイズ的にはヨーロッパのCセグメントに位置するクロスオーバーSUVであり、かつて同社が展開していた『カジャー』の後継車種としての役割を担います。ルノーの現行ラインナップにおいては、『キャプチャー』と『コレオス』（または2023年以降の『エスパス』）の中間に位置づけられるモデルとなります。

デザイン

ステランティスグループ（旧グループPSA）からルノーに移籍したジル・ヴィダル氏が中心となってデザインを手掛けたエクステリアは、ルノーが提唱する新世代のデザイン思想『アスレチックデザイン』に基づいて設計されています。シャープでダイナミックなラインが特徴的で、ボディの各部には、メガーヌEテック・エレクトリックで初めて導入された『マイクロオプティック・プレキシガラス技術』が応用されており、洗練された光の表現を実現しています。

パワートレイン

搭載されるパワートレインは多岐にわたりますが、その主力は、ルノーがF1レースで培った技術知見を応用して開発された『E-TECH』ハイブリッドシステムです。これは、高効率な1.2リッター直列3気筒ターボエンジン（HR12型）と電動モーター、そしてドグクラッチ式トランスミッションを組み合わせたもので、優れた燃費性能とダイレクトな走行フィールを両立させています。

これに加え、燃費性能を高めたマイルドハイブリッドシステムも設定されています。具体的には、1.2リッター直列3気筒ターボエンジンに電動アシストを加えた仕様と、より排気量の大きい1.3リッター直列4気筒ターボエンジンにマイルドハイブリッド技術を組み合わせた仕様が用意されており、幅広いニーズに対応しています。なお、ディーゼルエンジンの設定はありません。

プラットフォームとシャシー

車両の土台となるプラットフォームには、ルノー・日産・三菱アライアンス共通のCMF-C/Dの最新版である『CMF-C/D 3』が使用されています。これはカジャーでも採用されていたプラットフォームの進化型であり、剛性や安全性が向上しています。駆動方式は、前輪駆動（FF）を基本としつつ、四輪駆動（4WD）モデルも選択可能です。このCMF-C/D 3プラットフォームは、イギリスで製造されている日産自動車の3代目『キャシュカイ』とも共有されており、アライアンス内での技術連携の深さがうかがえます。

サスペンション形式は、前輪が一般的なストラット式、後輪がトーションビーム式を基本構成としています。しかし、四輪駆動モデルの上位グレードにおいては、より優れた操縦安定性と快適性を実現するため、進化した四輪操舵システム『4Control Advanced』と組み合わせてマルチリンク式リアサスペンションを選択することも可能です。この選択肢により、市街地での取り回しの良さと高速走行時の安定性が向上します。

インテリアと装備

オーストラルのインテリアは、先進的なデジタルコックピットが特徴です。ドライバーの正面には、見やすい12.3インチの大型デジタルメータークラスターが配置され、必要な情報を分かりやすく表示します。センターコンソールには、縦型の12インチタッチスクリーンを備えた大型インフォテインメントシステムが組み込まれており、ナビゲーションや各種設定、コネクティビティ機能などを直感的に操作できます。さらに、運転に必要な情報をフロントウィンドウに投影する9.3インチの大画面ヘッドアップディスプレイも設定されており、視線移動を最小限に抑えることができます。オーディオシステムには、高音質で知られるハーマン・カードン製のスピーカーを選ぶことができ、快適な車内空間を提供します。

特別仕様と生産

ルノーのスポーツ部門であるアルピーヌブランドにインスパイアされた、スポーティな特別仕様『エスプリアルピーヌ（ESPRIT ALPINE）』も、ルノーブランドとして初めてこのオーストラルに設定されました。内外装にアルピーヌらしいデザイン要素が取り入れられています。

生産は、スペインにあるルノーのパレンシア工場で行われています。

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